荒野のオオカミ
命の授かり物
この日、僕らは山の神々から、大きく逞しく強く、そして尊い、2つのシシの命を授かった。
昭夫さんは車をとりに行き、僕は森の中で待つ。
杉の枯れ葉、枯れ木を集め、火をおこした。
徐々に炎が力を増していった。
燃える香りが漂い、パチパチとはぜる音が、雪の森の中に響き渡る。
辺りに温もりがひろがり、手をあてると、冷えきった指先に生気がもどってきた。
彼らの命が僕の中に入ってきた。
炎を眺めながら、さまざまなものが内で渦巻いた。
雪の舞う森のなかで灯る小さな炎は、心も暖めてくれた。
長い時間をかけて生きてきた山の命を、一瞬で燃やす炎。
その炎を、多くの命を宿し、僕らは次を生きて行かねばならい。
焚き火、それは山からの授かった命。
薪
岩と松の呼び声
雪のちらつく峠を越え、沢沿いに車を走らせていると、大きな岩の上に座る、松の大木と出会った。
厚い雲に覆われる空に、薄暗く、寒々とした空気、冬の荒涼とした風景のなかで、その2つは異質な存在感を放ちながらじっとそこにいた。
土の無い岩の上に根をおろし、長い年月、命を燃やし続ける。
その中に宿る、命の強さに心を打たれた、
暫くの間、僕らはその場に引き留められた。
去り際、缶やらビニール袋のゴミが辺りに落ちているのが目についた。
こんな素晴らしい場に、こんな大きな命が生きる場で、何も感じず、平気でゴミを捨てていってしまった人達がいる。
彼らの暗く寂しい心と、その心が染み込んだゴミとが、この場の力を壊していた。
岩に木は動かず、ゴミを拾うことも動かすことも出来ない。
ただただ、待つしかない。
彼らに何故この場に引き留められたのか、彼らが僕らに何をしてほしかったのか、その理由の1つがそれだったのだろう。
会津のフリーペーパー‘’会津嶺‘’
以前僕が書いた詞が、会津のフリーペーパー‘’会津嶺‘’12月号に載りました!!
やったー!
Facebook等でちまちま発信するよりも、断然多くの方の目に留まることでしょう。
この短い詞を読んで、たった一人でも多くの人が、地球という僕らの星に意識を向けて、少しでも自らの生き方を見直して、心を、命というものを思って大切にしてくれたならめちゃめちゃ幸せで、動物も魚も虫も草木も大地も森も海も川も空も風も、地球は大喜びです!!
毎日毎日違和感なく使っている洗剤やありとあらゆる薬品類、物を買う度に付いてくるゴミ、毎日食べている食物、テレビに自動販売機…皆だれでも簡単に普段の生活のなかで、自分自身の為、家族や友達、大切な人達の為、他の国や地で暮らす人々の為、他の生き物達の為、この星の為に出来ることは限りになくあります!
そんな思いと意識を思い切り注ぎ込んで書いた詞です。
地球の為にこれからもめちゃめちゃ生きていきます!
皆、特に同世代の皆も一緒に力合わせて生きていこう!
雨の忘れ物
雨上がりの森を歩く。
雲が空を覆い、木々の葉はすっかり落ち、遠く連なる山々は茶色に染まり、灰色の空気が流れていた。
ほんの一瞬雲が切れ、その隙間から陽が顔を出した。
それはこの日初めて浴びる、陽の光だった。
その瞬間、森のあらゆるところがキラキラ輝いた。
枝に垂れる、雫が陽を浴びて輝いているのだ。
小さな一粒の雫。
その小さな雫の中には、大きな世界があった。
回りを取り囲む広大な山々が映りこみ、光をもたらしていた。
辺りを見渡すと、世界を宿し、輝くそんな雫がそこらじゅうにあった。
再び空は雲に覆われ、陽は消えて、森の輝きも無くなった。
その瞬間にしか見られない世界だった。
もし一日、一時間、一分でもずれていたら、この世界の中に入ることは出来なかっただろう。
ご飯を食べているとき、寝てるとき、本をよんでるとき、人と話していてる時、森では、山では、海のなかでは、この世界では一瞬一瞬命の物語が刻まれている。