旅する蜂ブログ

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自然を愛する男の日記 現在、カナダ・アラスカのユーコンの荒野で生きている!

私生活

ユーコン川・荒野の旅 ~探し求めていたものが見つかった~

タナナ村を出てから5日間、空は分厚い雲に覆われ、太陽は姿を消した。降りしきる雨に打たれ続けること5日間。最初のうちは何とも無かったのだが・・・テントも毛布も寝袋も荷物が次々と湿り始め、次第に心も湿り始めた。4日を過ぎる頃になると、もう殆ど…

ユーコン川・荒野の旅 ~食料が尽き、フィッシュキャンプを回る~

食料が底をつきかけた。米やジャガイモ等の食料が ビーバー村での10日程の滞在中、日に日に乏しくなって行った。そして出航前には殆ど無くなってしまっていた。ビーバー村に店は無く、100キロ程下流の次の村・スティーブンビレッジにも、その村のまた100キロ…

ユーコン川・荒野の旅 ~ビーバー村~

太陽は陽射しを強めながらゆっくりと上昇し、テントを照らしていった。テント内はぐんぐん気温が上昇し、たまらず僕は目覚めた。体がうっすらと汗ばんでいた。僕はそんな汗と、しつこくまとわりつく眠気と共に急な砂地の斜面を降りて川岸に向かった。それは…

ユーコン川1ヶ月目 出発地から1300キロ程の村、フォートユーコンに到着

ドーソンに滞在し2日目の早朝、町を歩いてるときに僕は尿意を覚え、インフォメーションセンターの中へ入って行った。広い広間を抜けて、建物の奥にあるトイレへと繋がる薄暗い通路を歩いてる時だった。一人の男がトイレから出てきて僕の横を通りすぎた。髭…

ユーコン川3週間目、ドーソンへ到着

3週間ぶりに携帯を開いた。小さな画面は、今まで常に回りに解き放っていた僕の感覚を瞬時に吸い込んでいく。全くこの機械は恐ろしいものである。ようやく抜けきったものの、早くも僕は現代器機の毒に蝕まれてゆく。 5月24日の昼過ぎ、僕はユーコン川下りの…

春の息吹と共に

ラバージ湖の畔で1週間、氷の溶けるのを待っていた訳ではあるが、ただ単に氷が溶けるのだけを待っていたのではない。僕には氷の他に、待っていた別のものがあった。 飛行機から降り立ち、外に出てまず目に入った物は、天を突き刺すかのようにとんがったトウ…

氷は消え、ついにカヌーを浮かべるときがやって来た

パラパラと降っていた雨は止み、それに代わるように風が吹き始めた。風は徐々にその強さを増していった。全てを吹き飛ばすかのように荒れはじめた。僕は堪らず岩影に身を隠した。風は土埃を舞いあげ、木々をユサユサと揺らし、湖の湖面上に大波を生じさせて…

森の中で待つ

短い夜が明け、樹上から鳥達の鳴き声が響き渡る。それを聞いて僕は目を覚ます。テントを出、すぐ目の前に広がる湖へと歩いて行く。凍てついた水のなかに入ってゆき、そして顔を洗う。冷たい水をかぶり、目が一瞬にして覚める。そして顔をあげ、広大な湖すを…

ユーコン川へ、出発だ!!

棚を開け、静かに眠っていた分厚いアルバムを取りだし、1ページ、また1ページと開いていった。僕がまだ物心つく前の赤ン坊の頃から、小学高学年位までの写真が順々に張ってあった。僕の回りには、いつでも自然が写っていた。 親に連れられて、僕は幼い頃か…

最大の不安は・・・グリズリーである!

ユーコン川を下るにあたり、僕にとっての最大の不安はカヌーの転覆により川に投げ出されることでも、襲い来る蚊の大群でも,気の遠くなるほどの孤独でもない。 最大の不安はそうグリズリー…体重が僕の5倍以上にもなる大型の熊だ。 ユーコンに限らず、シベ…

ユーコン近づき難し

今日は情報収集の日。ユーコンに関する本を読もうと図書館へ行った。約100年前のゴールドラッシュ時代に金に惹かれ、北米大陸・ユーコンへ渡った人々の事やアメリカの不況が当時どんなものであったのかが知りたくなったのだ。 手にした本は20世紀のアメリカ…

1枚1円の名刺

雑誌の編集者と打ち合わせを行うにあたり、直前で僕は大事なことを思い出した。 名刺が無い・・・ 会社を退職して世を徘徊するハイエナ・・・いわゆるフリーになったはいいが、まだ名刺を用意していなかったのだ。 何とかして早く作らなければ!!そう焦っ…

便所の中の戦い

彼(以後K)がなんと言おうと、僕はそれに従うしかなかった。 その空間はKの支配下にあり、不動の権力を有する王の下、僕は小さな下人。 だからKの言いうことには決して逆らえないのであった。 そこはKのアパートであり、僕は彼に1晩泊まらせてもらっている…

雪山の毛虫

その夜、空に雲は無く、近くに夜の輝きを霞ませる人工光も一切なかった。 透き通った空気の中、無数の星々が夜空一面をびっしりと覆い尽くしていた。 時々吹く微風が笹の葉をカサカサと揺らし、山の稜線の窪みに張られた小さなテントの中にスー…と入り込む。…

北米の広大な荒野へ行こう!!

静まり返った真っ暗な部屋の中、暖かく心地の良い布団にくるまれながらも僕はなかなか寝付くことが出来ずにいた。噴火する山の如く、マグマの様に心の奥底から興奮がゴボボコと湧き出てくる。 こういう日が何日も何日も続いている。 自由のききにくく重たい…

引っ越し

幽霊が出ないこと、そして窓は南向き、この2つが何よりも大事であった。その2つに的を絞って借りるアパートを探していたのが今から1年9ヶ月前である。幽霊は大の苦手である。やつらは過去数度にやたり僕の心臓を干し柿の様に縮み上がらせたものだ。あの…

越後三山縦走 ~所長からの選別~

その日、東京都世田谷区のある建物の中は普段よりも荒れ狂っていた。電話は止むことなく鳴り響き、FAXに印刷機は休むことなく次から次へと紙を吐き出し、社員は皆PCの画面を凝視しながらカタカタと絶え間なくキーボードを打ち鳴らして、舞い込んでくる…

斎藤健太の幸せの1週間③

2014年4月~2015年1月までの期間、僕は日本に居なかった。日本から遥か遠く離れた地、ブラジル・アマゾン地域のある農場で、カカオやバナナをはじめ、熱帯の果物の収穫を毎日の生活の主にして生きていた。その農場というのがまた広大な森の深緑に囲まれた場…

斎藤健太の幸せな一週間②

訳が分からなかった。一体何があったというのだろうか・・・全く訳が分からなかった。斎藤はそんな奴ではない。ゴキブリを大量に飼うような奴ではないことは言われなくとも分かっている。ゴキブリ好きだなんて聞いたことも無いし、ましてや飼うなんてことは…

斎藤健太の幸せな1週間

訳が分からなかった。一体何があったというのだろうか・・・全く訳が分からなかった。僕は食べていた夕飯を中断してテーブルを発ち、暗い階段を駆け上って自分の部屋に入り込んだ。階段下から母親の声が聞こえた。 「いきなりどうしたの?」 その問いを無視…

北アルプス・穂高岳と借地権

一体この土地は誰のものなのだろう?ふと浮かんだ疑問は、初めはそんな素朴なものであった。だが考えるにつれてその素朴さは消えて複雑なものになっていった。 いや“誰の”というのもよく考えてみればおかしな話ではないか。土地とはそこに住むあらゆる生き物…

日光旅 僕らをひっ捕らえた看板

思えば、都会に住む僕は看板というものに惹かれる事は全く無い。店がぎっしりとひしめく中、店は人の目を引くため、看板にど派手な装飾を施す。他の店はそれに負けじとさらに派手な装飾を施し、また他の店はさらにさらにそれに負けじと・・・何処までも何処…

日光旅 枯れ果てた植物園

山形県米沢から栃木県日光市まで遥々伸びている国道121号線、その道路沿いの森の中に上三依水生植物園はひっそりと身を据えていた。約22,000平方メートルの園内に植えられた約300種の花々は春先から夏にかけて一斉に花開き、訪れる人の心を癒す。 しかし僕ら…

日光旅 森に呼ばれた朝

今思えば、あの引き寄せられるような感覚は凄いものであった。それはなにか見えない紐でぐいぐいと引かれているかのようであった。 10月16日の日曜日早朝の事であった。僕は叩き起こされたかのように突然はっと目が覚めた。皆まだ気持ちよさげに眠っている。…

日光旅、栃木県の集落を訪れて

短かった。実に短い旅だった。しかしこの旅は、この上なき良い出会いにそして深い感銘を受けた旅でもあった。その地を離れる時に感じた悲しみは、今までにあまりない程の大きさであった。残酷な鉄の塊は感傷に沈む僕を物凄い速さでその地から運び去った。一…

温泉大国・米沢の旅館に忘れ去られた者達

それはつい昨日10月13日の事だった。 「おいどうした八須君!お前・・・このままじゃ始末書もんだぞ・・・」部長は苦笑いを見せながら言った。 「ごめんなさい、2日前から見当たらないんです。絶対にどこかにあるんですが・・・」 僕は答えた。 「そりゃ~絶…

東北・会津に佇む地味な山。その名も三岩岳!

10月1日、初秋の会津は灰色の雲で覆われていた。穏やかな陽光を浴びることが出来ず、ブナの木々達はなんだか悲しそうに枝葉を垂らしている。僕ら3人はそんな生い茂る木々の下を通り、山の上へ上へと目指して歩いてゆく。 標高2,000m程の三岩岳。この山の…

医者が解き放った一言(続編② ~追撃~)

「20年後、人工透析になるわよ」 検査結果を見て、医者は僕の腎臓機能が年齢のわりに悪いと判断したのだ。 「もうその腎臓は良くならないんですか・・・?」 恐る恐る僕は尋ねた。 「ならないわ、腎臓は一旦悪くしたら決して元に戻らないの」 その言葉で…