旅する蜂ブログ

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自然を愛する男の日記 現在、カナダ・アラスカのユーコンの荒野で生きている!

弱肉強食 心を痛めて過ごした夏の日々

もう殺さなくても良いんだ。
そう思うと気持ちがぐっと楽になる。
ここ何週間で一体どれほどの命を捻り潰してきたのだろうか・・・
殺生はもう沢山だ。
小さな命を奪って奪って奪って奪いまくる。
それももう終わりを迎えた。



事の始まりは数か月前に買った20kgの麦だった。
当時僕は痛風をどうにかしようと色々と試行錯誤していた。
規則正しい生活リズムは勿論、食事には人一倍気を利かせ野菜中心の食生活を心がけていた。
人参に玉ねぎにもやし・・・・・・

ある日、麦飯が尿酸値を下げるという情報を掴んだ。
早速麦を探しにスーパーへ行った。
しかし売っていたのは1㎏の小さな規格だけ。
1日に3合食べる男にとって1kgという量はそう多くは無い。
僕は頻繁にスーパーへと買いに行くようになった。
しかし時が経つにつれてちまちまちまちまと買うことが億劫になってきた。
そこであろうことか、20kgのばかでかい麦を通販で買ったのである。

僕は山へ行くときは何日も家を空ける。
3日間は普通だ。
時には5日も開けることがある。
そして始めてそれを目にしたのは7月の始め頃のことだった。
それは一匹の小さな芋虫だった。
久しぶりに家に帰ると…
芋虫が小さな体をウニウニとうねらせて壁を這っていた。
僕は思った。
「キャベツかなんかにくっ付いていたんだろ」
芋虫をつまむとムニィと柔らかい感触が微かに伝わってきた。
そのまま外へ逃がしてやった。
それからというもの何匹もの芋虫が壁を這っているのが目につき始めた。
「おかしい、どこから入って来たのだろうかこの芋虫どもは」
その答えが分からず僕は芋虫を一匹一匹丹念につまんでは外へ逃がしていった。

数日後・・・
羽の生えた虫が壁に止まっていた。
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しかも一匹などではない。何匹もいるのである。
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流石に焦った僕は何処から虫が湧いているのか部屋中を探し回った。
換気扇、風呂場、冷蔵庫、ゴミ箱・・・しかしいくら探してもその虫の出てくる源を見つけることが出来なかった。
僕は諦めてその内いなくなるだろうと思いその虫を一匹一匹逃がしてやることにした。
虫は一向に減らなかった。
逆に増えてゆくばかりであった。

そんな中、米びつの中の麦が底を尽いた。
麦を補充しようとロフトに置いてある20㎏の麦の元へと行った。
麦袋は口が開いていた。
中を覗き、そこに広がる光景に僕はゾクリと寒気を覚えた。
虫がうじゃうじゃと湧いていたのだ。
袋を揺らすと虫どもが一斉に羽を羽ばたかせて袋から飛び出していった。
中には交尾をしている虫までいる。
「俺の麦だぞ!!」
袋をベランダへひっぱり出し虫たちを一匹一匹丹念に取り除いていった。
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暑い…蒸し暑い夜だった。一匹一匹手でつまんでは取り除く作業は実に骨がおれる。
袋のなかで小さな虫が逃げ惑った。
それを執拗に追いかけて取り除いてゆく。
汗がTシャツを湿らし、額を滴となって滴り落ちていった。
どれぐらい悪戦苦闘したのだろうか…やがて袋の中の虫は全て取り除くことができた。
しかし部屋の中はもう虫だらけ…羽をパタパタとパタつかせ、鱗粉を撒き散らしながら自由に飛び回っていた。

「こんな小さな虫でも俺と同じように生きているんだ。儚い短い寿命の中で一生懸命生きているのだから殺してはならない」今までそう思って虫を外へ逃がしていたのだが…もう耐えられず僕の心は鬼と化した。
やらねば部屋が虫のものになっちまう。
彼らを殺すことにした。
一匹一匹潰していったのである。
指で潰すとプチっという感触と共に体液がドロリと出てきた。虫達は次々と殺されていった。
虫にとって部屋の中はまさに地獄だった。

それからというもの何日何日も小さな命を奪う日々が続いた。
何匹殺めたのかもう分からなかった。
掃除機で吸ったりもした。
しかしいくら殺しても虫を淘汰することが出来なかった。
数日後、再び米びつの麦が無くなりロフトへ上がっていった。
袋を開けると再び虫がうじゃりと湧いていた。
虫は袋の中で繁殖していたのだ。

再び汗をかきながらの取り除き作業が始まるのであった…

また・・・
麦を研ぐときに水に何匹もの芋虫が浮いてきた。
それでも捨てることなく僕は麦を食べ続ける。
20キロの麦を捨てることなど僕には絶対に出来ない。
ブラジルではばかでかい蟻がサンドイッチに挟まっていることや、買ったケーキが糸を引くことなど頻繁にあった。
ハエなんかは日本の比ではない。
ほっときゃ食い物はハエで真っ黒になる程である。
それに比べれば麦にたかる虫や芋虫位どうってこたぁない。
虫も芋虫も食ってしまえば栄養である。
僕はこれからも20キロの麦がなくなるまで食べ続けるのである。

そして8月半ば…長く長い日々が…ようやく命を奪う日々が終わった。
虫達がとうとういなくなったのだ。
それはつまり…僕が大量にこの手で小さな命奪いまくったことを意味する。
どうか次生まれ変わるときは米に湧く虫にはならないでくれ…死んでいった虫達に僕が出来るのはそんな小さな祈りぐらい…
本を読んでいるとき・・・執筆をしているとき・・・視界の端にパタパタと飛ぶ虫の姿をもう見ない。
朝目覚めると・・・日差しに照らされて壁は白く輝いていた。
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