旅する蜂ブログ

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母なる地球を、自然を愛する!!

一体、何をしにきたのだろうか。

9月3日17時頃、灰色の雲が奥多摩の空一面を覆い尽くし、町はどんよりと薄暗かった。
遠くの方からゴロゴロゴロゴロと雷が唸る音が聞こえてくる。
この時の空模様と辺りの雰囲気をみれば、これから雨が降るだろうと誰もが予測出来たであろう。
実際に天気予報では奥多摩は夕方18時~深夜12時まで降水確率8・90%と出ていた。

そんな中、二人のバスの運転手はこんな会話を繰り広げていた
「雨が降りそうだし、こんな時間にもうバスに乗る人なんていやしねぇでしょ。終わり、今日の勤務はもう終わりだ!けぇろう!」
「そうだな、この時間はいつも人は乗らないし、…よし!帰るか!!」
そう言って二人のバスの運転手は終電でもないのにさっさと家に帰ってしまった。
バスの時刻表には急遽臨時休業とでっかく書かれた張り紙が貼りつけられてしまった…



そんな無責任な運転手がいるものなら会ってみたい!
僕ら7人は無事に奥多摩駅17時発のバスに乗ることができた。

向かう先は30分ほど離れた東日原バス停。
今回の登山は夜の山の中を眠らずに15時間程歩くことが目的だ。
東日原~鴨沢という長いルートを昼間ではなくあえて真っ暗闇の中を歩くことが。

「夕方に、しかもこれから雨が降るというのに、ザックを背負った彼らは“一体これから山に何をしに行くのだろうか?”」
バスに乗った僕らを見て運転手はきっとそう思ったことだろう。

バス停に着いて僕らは早速山の中へ入って行った。
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時は6時前。
木々で覆われている山の中はもうすっかりと暗い。
辺りは不気味なほど静まり返り、地面を歩く僕らの足音だけがザッザッザッと響いていた。

少しすると何処からかガスが出てきて、辺りが白いモヤで覆われた。
ヘッドライトの乏しい灯りも数メートル先までしか届かない。
しかし、一列に列を成す僕らからは笑い声や話し声が楽しげに聞こえていた。

2時間程経った頃、ポツリ…ポツリポツリ…ポツリポツリポツリと空から水が降ってきた。
雨である。
予想通り雨が降ってきたのだ。
雨は次第に強さを増してゆき、ザーザーと容赦なく僕らに降り注ぐようになった。

僕らの中から会話や笑い声がめっきり減ってしまった。
でも僕らはひたすら歩いた。
何しろゴールはまだまだ先…あと10時間以上も歩かなくてはならなかったから。

雨はいっこうにやむ気配はなく、僕らの身体を叩きつけてくる。
そんな中、仲間の一人が口を開いた。
「はぁ…“一体何しに来たんだろ”」
彼女と僕を除く他5人のなかで一体何人がこの言葉に共感したのだろうか?
誰もその言葉に返答はしなかった。
直ぐにまた雨の滴る音が、ポツポツと周囲を埋め尽くした。

降りしきる雨と襲いくる眠気ですっかり気を削ぎ落とされていた僕らは23時過ぎに避難小屋に避難した。
一息つくと何だか安心し、もう雨の降る中を歩く気にはとてもなれない。

「雨は降ってるし眠いよ!もういーよ!今回はもうおしまい!!」
全員一致だった。

また誰かが口を開いた。
「“俺ら一体何しに来たんだろな?”」
皆ゲラゲラと笑っていた。

こうして東日原~鴨沢までの長く、とにかく長い夜中の登山は始まって直ぐに雨と眠気のために終わってしまったのだった。





一晩僕らはぐっすりと眠り、翌朝、来た道を戻って山を降りて行った。

東日原のバス停に着いたのは10時前。
バス停のベンチには二人の運転手がのんびりと座っていた。
僕らは彼らの前に全身濡れて、泥だらけの姿で現れた…。

じろじろと僕らを見つめる運転手達。
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彼らは僕らを見てきっとこう思ったことだろう。
「おーおーおーおー…これはまた酷くきったねぇ奴等がやって来たな。ん?あいつらは確か、夕方に山に入った奴等じゃ??何でここにいるんだ?もう帰ってきたのか?
“あいつら一体、山に何をしに行ってきたのだろうか??”」

その問いに僕らは答えることは出来ないであろう。