旅する蜂ブログ

奥会津の地球暮らし

~マタギの見習い~ 自然を愛し、地球の詩を書き、奥会津の山奥で素朴に暮らす

日光旅 枯れ果てた植物園

 山形県米沢から栃木県日光市まで遥々伸びている国道121号線、その道路沿いの森の中に上三依水生植物園はひっそりと身を据えていた。約22,000平方メートルの園内に植えられた約300種の花々は春先から夏にかけて一斉に花開き、訪れる人の心を癒す。

 しかし僕らが訪れたのは10月中旬。花など殆ど咲いていなかった。冬を前にもうどれもこれもほとんどが枯れていた。葉は黒ずんで剥がれ落ち、茎は萎れて俯いている。花の名称が書かれた小さな白い板の看板は、墓標の様に花壇の至る所に突き刺っている。“季節外れ”。もう誰がどこをどう見ても季節外れだ思うであろう廃れ様であった。

朝食を食べ終えて周辺の散策をしている時に、せっかく来たのだからちょっと寄ってみようと軽い気持ちで僕らは寄ってみたのだ。通常500円の入園料も300円まで値下がりしていた。それでも僕ら以外にお客さんは居なかった。

枯れ果て、寂しげに横たえる植物達を眺めながらしばらく歩いていると地面に丸くうずくまる人影が遠目に見えた。こんな所で一体誰がなにしてるんだろう・・・ふと興味を惹かれた僕はその丸くうずくまる人に近寄って行った。お婆ちゃんだった。お婆ちゃんが片手に鎌を持って草を刈っていたのだ。

「こんにちは~、草刈りですか」

僕の言ったその声で鎌を持つ手を止め、婆ちゃんはハッと顔を上げた。

「あらあら、こんにちは」

婆ちゃんは鎌の刃で軍手にくっ付いた泥を削げ落しながら話し始めた。

「そうよ、こうやって刈らないと春に草ボーボーになっちゃうの。綺麗な花園の方がいいでしょ?だから私は春に向けて草刈りをしているの。朝から1日ずっと・・・1日ずっとよ?腰が痛くて痛くて・・・それに何よりも飽きちゃうのよね。でも、ありがとう!こうして兄さんみたいなお客さんが話しかけてくれることが嬉しいの!それが何よりの楽しみなのよ。お兄さんは何処から来たの?」

皺くちゃな顔がだんだんと笑顔に変わっていった。そして嬉しそうに話すお婆ちゃんは花の様に輝いていた。僕はしばらく座って話を楽しみ、その場を去った。話しかけた時のあの笑顔が今でも忘れられない。

草花が枯れ果て、寂れた植物園。そんな園内を見回してみると、至る所に体を丸く丸めたお婆ちゃん達が草を刈っていた。