運命の地
僕は窓の外を見た。木々の隙間から見える夜空には無数の星が輝いていた。人里離れた森の中、音が無い静かな夜、街灯も騒音も無い、何ものにも邪魔されずに純粋な眼差しで見ることのできる夜空。綺麗だった。突然、心地良い静寂を破って携帯電話が鳴り響いた。僕は電話に出た。
「久しぶり八須君、今どこにいるんだ?」
以前東北を旅していた時に温泉で出会った金山町(福島県・奥会津)の町会議員さんからだった。
「今、君の故郷(埼玉県鴻巣)の市議会議員さんと金山町(福島県奥会津)で飲んでいるんだ。それでどうやら君の事を知っているそうなんだ。今電話変わるからね」そう言って電話は女性に変わった。
「もしもし八須君?幼い頃よく遊んでいた市川です、覚えてるかしら?」
市川…市川…市川…頭の中で名前を連呼して遥か昔の記憶に呼びかける。2秒ほど呼びかけた。
「・・・いや・・・」記憶からは市川さんの顔も名前も全く何も出てこなかった。
「まぁまだ小さかったからね、覚えてないのは当然ね!幼稚園に入る前の小さかった頃に、親子同士でよく遊んでいたのよ」
「ごめんなさい、全く覚えていないです」
「今度親に聞いてみな、知っているはずだから!それはそうと今色んな所を旅しているんだって!?」
「いや、旅はもう落ち着いてこれから丸太小屋を建てるんです!」
「丸太小屋!!!!?どこに?」
「それが今、北海道か会津かと迷ってて・・・」
この一言は強烈だった。強烈な巡り合わせを感じた。僕は決心した。丸太小屋は福島県・金山町に建てよう!金山町に移り住もう!!と。
金山町・町会議員さんに再び電話が戻った。
「それじゃあ、君の好きそうな最高の土地を探しといてあげるから!!今度来た時に案内するよ!」
後日同じく金山町で出会った町のマタギ・猪俣さんにその件について電話した。
自然を愛する者同士、考えるところが似ているのだろう。猪俣さんは僕の好みを察したようで、土地はゴミゴミした所じゃなくて静かな場所を頼むよ!と助言をしてくだったそうだ。これ程好意を持って、訳の分からない若者を協力してくれる町があるだろうか・・・僕は感動した。
森が育んだ澄んだ湧き水、瑞々しい空気、豊富な山の恵…僕の自然大好きワイルドライフがこれから始まる!!!!!!!
その土地にある素材を使って一生愛せる素晴らしい家を作り、その空間にいる全生物と共に季節や日々の変化を共にし生きて行こう!ミツバチを飼い、木を植えて森を作り、水に空気をどんどん綺麗にしよう!!メープルシロップなんかを作ってもいいなぁ、パンを焼いてもいい!グミや山ブドウでジャムを作るのもいい!!生命力みなぎる野菜を偉大な地球と共に作ろう!!!
僕は今週末にもう会津に行く。雪が降り積もる前に土地を見て回るのだ。
今年の冬には木を切り、石を集め始めようと思う!!!
やらなければならない楽しい仕事が沢山だ!!!!
※(僕の話を聞いて、過去多くの人がこんなふうに勘違いした。八須は、どこか人の入らない山奥に引きこもり、文明社会から隔絶された世界で、人に会わず、機械もなにも使わず、原始人みたいに生きていくんだ・・・・と。
全く違います!!!!)
森大好き!!