小屋を建てる地
僕は自転車から降りて辺りを見回した。滅多に車の入らない地は静けさに満ちていた。川の流れる音が絶えず響き渡り、気分を静めてくれる。この場所を訪れるのはこれで3度目だった。訪れる度にこの場所が好きになってゆく。
そこは、部落から100m程離れた山に囲まれた地。かつてそこではイワナの養殖を行っていたそうだ。もう使われなくなった古い小屋が寂しそうにポツンと建っている。僕は佇み、この場所にどういう空間を作ろうか・・・想像を膨らませた。
すぐ近くには澄みきった水を湛えた川が流れ、その川から引かれた水が小川となって荒れ地を流れている。川にはイワナがいるそうだ。小屋を解体し、荒れ果てた地を整備。白樺にブナの木を植えて森を作り、木々の間に小川を流せば面白そうだ。森のなかを流れる、木漏れ日に輝く小川。木には沢山鳥の巣箱を取り付けて小鳥を呼び込むのはどうだろうか。鳥の鳴き声に満ちた森。小川が流れる森のなかに建つ丸太小屋!畑も蜜蜂も勿論、木こり仕事で木材を引く小さな馬も飼えそうだ。少し手で掘れば湧き水も出ると言っていた。温泉へも歩いて10分位の距離。今一番の候補地♪
でも、1つだけ気がかりがある。日当たりがあまり良くないということ。ただそれだけ。 今は除雪車が入らないと言うが、僕が後継者のいないという除雪車のドライバーになって交渉してみよう。 土地の持ち主のおじいちゃんも、小屋でもなんでも好きに建てて良いと口頭で言ってくれている。良い流れ、絶好調! 昔のイワナ村 イワナの住む川