鹿狩り
朝、突然携帯が鳴り響いた。
金山町のヒーロー昭夫さん(マタギ)からだった。
「今から山に行かないか?」
「行きます!」 寸秒たたずの即答だった。
マタタビ細工の予定が入っていたのだが、山に一瞬のうちに押し潰された。
1月には珍しいという冷たい雨のなか、静かな木々の間、深い雪の上をかんじきで歩いてゆく。
前にあるのはライフルを抱えた昭夫さんの偉大なる背中。
神経を周囲に傾け、会話は一切ない。
それは今までの登山とは、全くの別物であった。
森のなかには鹿の足跡が縦横無尽に伸びていた。
仕留められた2頭の内、一頭を解体する。
崖っぷちでの解体だった。
脂肪の無い引き締まった筋肉の塊だった。 もう一頭はロープを結び、急斜面を引き上げ、森のなかを引いていった。
母なるの大地の命を見た。
山を森を駆け回り、多くの葉を食らい生きてきた鹿!
鹿は大地の生命の凝縮だ!
動く大地そのものだ!
一体どれ程の命が集まっているのか・・・
肉を食べると直ぐに体が熱くなった。
強すぎるエネルギー。
肉は多く食べるものでは決してないと改めて思った。
昔、狼を絶滅させた僕ら人間。
今、その反動で鹿等が増えすぎ、山が泣いている。
今に生きる皆よ、外部から持ってきた飼料を食べさせ、肥やした不自然極まる豚や牛を味に騙され食べている場合じゃないぞ♪