旅する蜂ブログ

奥会津の地球暮らし

~マタギの見習い~ 自然を愛し、地球の詩を書き、奥会津の山奥で素朴に暮らす

蜂蜜物語

ある晴れた日の朝のこと。
深まる秋の空気の中、庭の草をいじっていると、一本の草の花の先にふと目が奪われました。
花の先には、絶命し、干からびたハエが一匹止まっていたのです。
蟻等に食べられることなく、まるで彫刻の様に、命の尽きたその体をこの世界に留めていました。
その小さな物語に心を奪われ、僕は草を千切って家の中の花瓶にさしました。
夜、ランプのもとで本を読んでいる時に、朝、コーヒーを飲んでいる時に、ふとそのハエが目に入ると、この世界を自由に飛んでいた頃のハエの姿に、心が自然と広がっていきます。
まるで一瞬にして、ハエの小説を読んでるかの様に。
小さなハエが、日々の一時をなんと豊かにしてくれることでしょうか。

日に日に秋の色を深める中、今日は山へ栗拾いに行きました。
栗は沢山落ちていましたが、虫や動物達の方が一足早かった様で、食べカスばかりでした。
それでも草をかき分け、いがいがに刺されながらもその残り物の中から食べられそうな栗を探していきます。
栗の運命は厳しいものです。
何百何千という栗を実らせて落としても、一体どれ程の実が、他の生き物達に食べられることなく芽を出し、他の植物達との厳しい生存競争に勝って、大木へと育っていくのでしょうか。
目の前に立つ一本の栗の木は、幸運の木であり、そして積雪3mを越す雪深いこの奥会津で生き抜く強靭な生命を宿す木でもありました。
森に山を覆う草や木々。
栗に限らず、それら一本一本が尊き命でもあります。

草の先でミイラとなったハエ、多くの命を育む栗の木、夕焼けに輝く湖面をライズする魚達、秋の香りを乗せて吹く風・・・
僕らの身の回りにある世界、自然は、一瞬一瞬変化し続ける、生きた芸術です。

蜜蜂達は、蜜を集めます。
絶命したハエが止まる草の花から。
力強く生きる栗の木から。
何千何万という数の草木から。
一本一本壮大な物語を秘めた草木から。
その小さな体で蜜を集めています。
膨大な生命の物語と共に。
蜂蜜はまさにこの地球の命の滴です。
生きるということは、彼らのその生きる力を得るということ。
食べた彼らの命を全て背負っていくということ。

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