旅する蜂ブログ

奥会津の地球暮らし

~マタギの見習い~ 自然を愛し、地球の詩を書き、奥会津の山奥で素朴に暮らす

ユーコン川1ヶ月目 出発地から1300キロ程の村、フォートユーコンに到着

 ドーソンに滞在し2日目の早朝、町を歩いてるときに僕は尿意を覚え、インフォメーションセンターの中へ入って行った。広い広間を抜けて、建物の奥にあるトイレへと繋がる薄暗い通路を歩いてる時だった。一人の男がトイレから出てきて僕の横を通りすぎた。髭を生やした黒い顔からは年齢は判断しがたい。服装は全体的に茶色を帯び、薄暗い空間の中でより一層地味に見える。何処かの炭鉱から出てきたかのようだった。日本人だった。そしてその男が放つ、僕に何処か似たにおいが、僕を引き留めた。そして振り返り、通路を出て行こうとする男に僕は話しかけた。 

「こんにちは!どこ行くんですか?」 「うわっ、びっくりした!日本人だったのか!?黒すぎて日本人だと思わなかった!」 

彼は自転車で旅をしていた。 

「これからさらに北へ走り、イヌビックという村へ行き、北極海を見るんだ!君は?」 

「僕はカヌーで川をのんびり下ってるんです!あと3ヶ月位かけて海の方まで行こうかなぁ~って!」

 すると彼は梅干しのように顔をしわくちゃにし、悔しそうに言った。

 「なんっっだよっもう!!面白いなっ!!!何で今日なんだよっっ!もう俺出るところなんだよ!!」 

僕の話し方か、それとも旅の内容かよく分からないが何かが彼のツボにはまったらしい。 

「今日もう何処かへ行っちゃうんですか?」 

すると、彼の顔に影がさし込み、何だか暗い雰囲気が滲み出てきた。 

「何かあったんですか?」僕は気になって聞いてみた。 

「実はカメラを水没させちゃってさ・・・何とかメモリーカードは無事だったんだけど本体は壊れちゃったんだ・・・。これからホワホースへヒッチハイクで戻って新しいのを買おうと思うんだ・・・」 

「あぁ・・・」僕はかけてあげる言葉が見つからず、彼の失意に飲み込まれた。 僕は話題を変えようと違う話を持ち出した。 

「これから日本の友人に手紙を書かなきゃ!」 

「日本の何処に出身なの?」 

「埼玉県の田舎町ですよ、日本に帰ったら北海道か会津で良い森を探して、自分で丸太小屋を作って暮らすんです!!」 すると彼の暗い顔が輝き出した。 

「何だよ、それ!それは俺の思い描いていた夢だよ!!めちゃくちゃ面白い!」 そしてまた梅干しのように顔をしわくちゃにし、悔しそうに言った。 

「何で、何で今日会うんだよっっ!!もう俺行くところなんだよっ!!」 

「じゃあその夢の丸太小屋作りを始めたら連絡下さいよ!!」僕は言った。 「え、手伝ってくれるのかい?」 

「いや、作ってるところ見物しようかなと」 

「なんだよっっ!!」彼の顔に再び梅干しが現れた。 

 連絡先を交換したのち、彼は新しいカメラを買いに数日間汗を降り散らして走ってきた来た道を戻るため、薄暗い通路を去っていった。 

 僕はトイレに入った。昔の金鉱時代の雰囲気をそのままに作られたトイレであった。洗面台にある大きな鏡で久しぶりに自分の顔をに眺めた。

 そんなに黒くなかった。日本人と思われないほど、黒くはなかった。 

 


  ドーソンの町を出て、10日ちょっとが過ぎ、僕はアラスカへ入った。今日、ドーソンから500キロ程下流の小さな村、フォートユーコンに到着。この10日間・500キロの道中もまた、多くの事があった!!日々の出来事が全て深い経験として、僕の中に積み重なってゆく。

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朝方のドーソンの町

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ドーソン最終夜の焚き火パーティー

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100人ほどの村、イーグル

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土と共に息づく小屋

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イーグルを歩いていると、さんさんと降り注ぐ暖かい日差しのもと一軒の木造の白い家からクラシックの心地よい音楽が聞こえてきた。見ると家の前の庭におばあちゃんが1人、音楽に合わせて地を踏んでいた。裸足の僕を見て「何て恰好をしてるのよ!?靴を持っていないの?」と哀れみを含んだ驚きの顔を見せた。さらに北へ行くと寒いからと、食料に暖かい服、靴下までくれた。

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イーグルを去って直ぐに出会った川岸の男たち。そのゴーグルで濁った水のなかは見えるのか?僕の質問に彼の答えは・・・?

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荒野の森のなかで犬と共に1人で生きる男、アンディー。自分で家をたて、畑を耕し、魚、熊、鹿を食べている。彼の生き方は、、僕の思い描くこれからの生き方そのものであり、共に過ごした2日間は僕に素晴らしいインスピレーションを与えてくれた。僕が自分の家作りに着手し、良い具合に進んだ頃、再び彼を訪れようと思う。今度は2ヶ月程!!

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熊、ムース、カリブー、ビーバーの骨。

この中から自分で気に入ったものを選び、1日かけてアンディー共にナイフを作った。

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アンディーの犬、トゥーペスと共に近くの湖の上をゆく

f:id:Yu-Ma:20170630051645j:plainビーバーの巣の近くの無人の丸太小屋。この1ヶ月間、暗闇が恋しく、この小屋で、ランプの小さな火と共に過ごした久しぶりの暗闇で一体何を思ったのか・・・?

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太い一本の白樺の傍に建つ無人の丸太小屋。ここで過ごした素晴らしい2日間は・・・?

f:id:Yu-Ma:20170630051833j:plain陽に輝く僕のケツ。動物達も水浴びしするクリーク(小川)で水浴び。姿はなくとも彼らの存在はここにあり!綺麗になるのに石鹸もシャンプーも何も必要ない!!

f:id:Yu-Ma:20170630051856j:plain 貴重な栄養源となっているタンポポ。そして見映えは宜しくないがとびきり上等なパンケーキ!!