2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧
それは9月の半ばごろからか・・・彼女は必死にしがみ付いていた。 葉は雨粒に打たれてバッタバタと激しく上下し、風に吹かれて四方八方に揺れ動いた。足を離してしまえば、たちまち彼女の軽い体は雨嵐の中へ飛ばされてしまうことだろう。 彼女は振り落とさ…
何故スリッパが増えているんだろう… 初めてそれに気が付いたのは、1人温泉から部屋へ戻った時だった。 夜はもうすっかりと更けており、辺りを真っ黒な世界が隙間なく覆っていた。 僕は露天風呂から上がり、館内へ入った。 廊下は薄暗く、電球がオレンジ色…
その日、僕は尿意を覚えて目を覚ました。 いつもやかましい目覚まし時計に叩き起こされている僕にとって、それは珍しい事であった。 目を開け、視界に映った風景もまた見慣れたものではなかった。 普段ならば6畳程の狭い部屋で目覚めるものだから、いつも…
山には秋が来ようとしていた。 木々の葉が少しずつ赤く、黄色く色づき始め、どこからか涼しい風がサワサワとやって来る。 燃える様な夏を耐え忍んだ山に住む生き物たちは、心地よい森の中で踊り、歌い、秋の到来に心を躍らせる。 そんな陽気に溢れる森の中に…
今から3年前の今頃だろうか・・・いやあれは確か10月過ぎ頃だった。 ツンと鼻を刺すような薬品臭が漂う、白い小さな病院の一室で、死刑を宣告された者の様に、僕はうな垂れて椅子に座っていた。 数秒前、目の前の椅子に座る白衣を着た医者の口から放たれ…
奴らに囲まれた時、俺は悟った。 俺の命ももうここまでか・・・。と 奴ら恐ろしくでかかった。 今まで見た生物の中でも、こんなにでかいものは見たことが無い。 俺の体の何倍・・・いや何十倍もあった。 見上げるとそれはまるで大木でも見上げている様であ…
9月3日17時頃、灰色の雲が奥多摩の空一面を覆い尽くし、町はどんよりと薄暗かった。 遠くの方からゴロゴロゴロゴロと雷が唸る音が聞こえてくる。 この時の空模様と辺りの雰囲気をみれば、これから雨が降るだろうと誰もが予測出来たであろう。 実際に天気予報では…