素晴らしい朝
夜明け前だった。土手の上に上がり、振り返ると僕は固まった。見事なまでのオレンジ色の朝焼け空が、町の上に広がっていた。こんなに綺麗な朝焼けは滅多に見られない。あまりの美しさに僕は見とれた。体中が嬉しさに満ちていた。
「おはようございます。綺麗ねぇ今日の朝日は!」はっとなって振り向くと、1人の見知らぬおばあちゃんが直ぐ傍にいた。
「いやぁ凄いですよ今日のこれは!!!!ここ最近一番です!!」
「そうねぇ私もそう思う!私は毎朝こうして歩いているの、朝はやっぱり家の中で迎えるよりもこうして歩くべきね」
いつしか僕らは朝日を浴び、話しながら土手の上を歩いていた。お互い名前も分からなかった。
前方から新たにおばあちゃんが2人やってきた。
「あらおはよう!そのお兄さんは?」2人が僕を見て言った。
「私の新しい彼氏よ」どうやら僕らはこの短い間で恋人になっていたらしい。数十も年は離れ、名前すら分からないけれど、そういうことらしい。なかなかいいではないか。
僕らは淀むことのない会話を交わしながら尚も歩いてゆく。話を聞いていると、おばあちゃんの目には、この今の世界に明るい未来は見えていなかった。破滅が見えていた。一体何年何十年そんなことを思い続けて生きてきたのだろうか・・・。聞くうちに嫌などんよりとした空気が流れてきた。僕はそれに包まれることなく、ウキウキしながらこれからの小屋作りの計画やら何やらの話をした。これからの生活は考えるだけで楽しすぎる、ウキウキしないわけがない。そんな僕の話を聞いて、おばあちゃんは言った。
「今の世の中に、そんな事をする人がいるんだねぇ!なんだか少し未来が明るくなったわ!」この言葉がさらに僕にエネルギーを与えた。先ほどまでの嫌な空気は浄化され、明らかに周りの空気が変わった。
「いや、僕みたいなのはこの世界にいっぱいいますよ!!これからも増え続けます!」
土手沿いに建つ僕の母校の中学校が近づいてきた。土手を降りて中学の脇を歩いてゆく。町中に入って暫くしてから僕らは別れた。輝く朝焼けはすっかり薄れ、赤々と太陽が世界を照らしていた。淡くて楽しい一時であった。早朝の外には素晴らしいものがゴロゴロと転がっていた。
昨日、大澤校長先生(当時のサッカー部の顧問)に招かれ、昨日母校鴻巣西中学校の全校朝礼で僕は登壇し、自由で可能性に満ち溢れた若い若い子供達を前に少しだけ話をさせて頂いた。
500人の眼差しを前に話すのはかなり久しぶりの事で、見事に緊張し、話したいことがうまく言葉にならず、10分の1くらいしか伝えたいことが言えなかった。見事なまでに砕け散ったと思う。
質問タイムに入り、一人の体育の先生が僕に言ってきた。
「いやぁ、八須君、君の事はよく覚えているよ!クレア鴻巣(合唱祭等を行う大きなホール)の中に、外で捕まえたカエルをポケットに入れて持ち込み、会場に大混乱を巻き起こしてたからね!!覚えているかな?」
カエル・・・?確かにカエルは好きだけど、僕が持ち込んで混乱させた???全く覚えていなかった。
「・・・いや、まったく記憶にないです」恐らく誰か違う人の事を言っているのだと思った。
その後、好奇心に輝く数人の先生方が僕の所にやってきて、会話攻めにあった。
そに自然の暮らしいいなぁ!
私もやりたい!!
小屋が出来たら遊びに行ってもいいかな?いや、作りに行ってもいいかな???
話しかけてくる先生方は皆自然を愛し、そして自然を望んでいた。共感してくれる人達に出会えて、僕は嬉しさで弾けそうだった。
友人が作ってくれた、森のジャム(山ブドウ)!!!!とキンカン酒!!!!体が大喜びである!!!!!僕の元気の源!