医者が解き放った一言
今から3年前の今頃だろうか・・・いやあれは確か10月過ぎ頃だった。
ツンと鼻を刺すような薬品臭が漂う、白い小さな病院の一室で、死刑を宣告された者の様に、僕はうな垂れて椅子に座っていた。
数秒前、目の前の椅子に座る白衣を着た医者の口から放たれた強烈な一言は、僕を絶望のどん底へと突き落としたのだ。
これから過ごすであろう何十年と長い人生のことを想像すると、当時僕の胸は躍ったものだ。
寿命はまだまだあるはずだ!俺はあともう60年は生きるぞ!60年あれば一体どんな事を経験するのだろう?何十年後には俺は一体どこでどんな事をして、生きているのだろうか?
これから世界中の自然を舞台に冒険したいし、まだ知らない世界(例えば・・・食ったことのない食べ物や、行ったことのない土地等々)を知りたい!
好奇心は湧きに湧き、頭の中で描く未来は青空の如くどこまでもどこまでも広がり明るかった。
これから待ち受ける人生が楽しみで楽しみで仕方が無かった。
僕は小さな頃からずっと生き物が大好きだった。
図鑑を手当たり次第読み漁り、生き物の特集をやるテレビは進んで見てたりしていた。
そういった中でちょくちょく生物の舞台としてあがっていたアマゾンの地。
野生生物の宝庫・アマゾン、そこは生き物が好きな人ならば、必ずや一度は憧れる地ではなかろうか・・・?
僕はその憧れを抱いた内の1人だった。
そんな中、3年前、当時大学3年生だった僕は小さな頃からずっと…ずっと憧れていたブラジル・アマゾンへ1人で行くチャンスを得ることが出来た。
戦後にブラジル・アマゾンに移住した方々と大学との繋がりが、それを実現させてくれたのだ。
期間は9ヶ月。
過去何回か経験していた2~3週間の海外一人旅とはケタが違う。
9ヶ月という長期間があれば色々な事が出来る!色々なものが見られる!!
まだ知ら世界へ、それもずっと憧れていた地へ行くのだ!
僕の心ははち切れんばかりに昂った。
人生はこんなにも刺激的で面白いものなのだと。
そのブラジルへの冒険を前に控え、僕は健康診断をした。
だが・・・そこで思わぬ悲しい現実が僕の人生に突如降りかかって来たのだった。
医者は検査結果を見て僕に言い放った。
「このままいけば・・・20年後、君は“人口透析”することになるわよ」
僕の頭の中は一瞬にして真っ暗になった。
人工透析・・・
その一言は今まで描いていた未来像を一瞬で崩壊させ、アマゾンへの冒険をも絶望で覆ってしまった。
3年前の医者が解き放ったこの言葉を機に、今までの僕の生活は、いや考え方も生き方も何もかも全てが劇的に変わっていってしまったのだった・・・。
PS
続く
(モンテクリスト伯のクライマックスが近づいており、読みたくて読みたくてし方がない。その衝動を抑えることが出来ない為、今日はここで止めます)