旅する蜂ブログ

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母なる地球を、自然を愛する!!

「漂流者の仮住まい」

 
 
車のドアを開け、薄く積もる雪の上に降り立った。目の前に建つのは僕の体の100倍~1000倍位大きな一軒家。古く、中に入るとずっしりと年季の入った息が吹きかかる。整然とした室内。1人の男が住むには十分すぎる、いや広すぎる位だ。

そこは、これから僕の仮住まいとなる場所だった。

 どこまでもどこまでも、果てしなく広がる大海原を、流れゆく僕は筏の漂流者。
いつの日か、巨大な海流に飲み込まれてしまった。
何だかよく分からないが気がつけば、福島県の奥の方にある小さな町・金山町に漂着していた。

 こんなこと母ちゃんの腹から飛び出した時には想像すらしていなかったことだ。

 というわけで、とんとん拍子で仮住まいも決まりました。
家賃は月10万円。漂流者には高すぎると値切ると、月1万5千円に下がった。町から月5,500円分の商品券が貰えるそうなので、実質9,500円。

 雪がどかどか降り積もってきっとこのでっかい家の中に閉じ込められるだろう。
静かな雪の世界で週に40時間位僕はぐっすり眠り、存分に夢の世界を飛び回ろうと思う!

 丸太小屋作りは、まだ土地選びに時間がかかりそうなので、じっくりと4年5年を見て金を貯めながら進めていきます♪

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小屋を建てる地

 

 僕は自転車から降りて辺りを見回した。滅多に車の入らない地は静けさに満ちていた。川の流れる音が絶えず響き渡り、気分を静めてくれる。この場所を訪れるのはこれで3度目だった。訪れる度にこの場所が好きになってゆく。  


 そこは、部落から100m程離れた山に囲まれた地。かつてそこではイワナの養殖を行っていたそうだ。もう使われなくなった古い小屋が寂しそうにポツンと建っている。僕は佇み、この場所にどういう空間を作ろうか・・・想像を膨らませた。  

 すぐ近くには澄みきった水を湛えた川が流れ、その川から引かれた水が小川となって荒れ地を流れている。川にはイワナがいるそうだ。小屋を解体し、荒れ果てた地を整備。白樺にブナの木を植えて森を作り、木々の間に小川を流せば面白そうだ。森のなかを流れる、木漏れ日に輝く小川。木には沢山鳥の巣箱を取り付けて小鳥を呼び込むのはどうだろうか。鳥の鳴き声に満ちた森。小川が流れる森のなかに建つ丸太小屋!畑も蜜蜂も勿論、木こり仕事で木材を引く小さな馬も飼えそうだ。少し手で掘れば湧き水も出ると言っていた。温泉へも歩いて10分位の距離。今一番の候補地♪  

 

 でも、1つだけ気がかりがある。日当たりがあまり良くないということ。ただそれだけ。 今は除雪車が入らないと言うが、僕が後継者のいないという除雪車のドライバーになって交渉してみよう。 土地の持ち主のおじいちゃんも、小屋でもなんでも好きに建てて良いと口頭で言ってくれている。良い流れ、絶好調! f:id:Yu-Ma:20171119153742j:plain 昔のイワナf:id:Yu-Ma:20171119153658j:plain イワナの住む川 f:id:Yu-Ma:20171119153829j:plain f:id:Yu-Ma:20171119153855j:plain

地球と大地

大地
 
荒野の旅で僕は靴を脱いだ。僕は大自然の中で常に裸足だった。

幼少期、僕はいつでも裸足で過ごしていた。
小学校に上がると、僕は靴を履くようになった。
それ以降24歳まで、僕は靴を履き続けてきた。
僕は幼少期の自然体に戻りたかったのだ。
靴を脱いで外で過ごすことは20年ぶりの事だった。

脱いで初めの頃、足の裏は傷つくばかりだった。
藪の中に入ればバラや松ぼっくりの棘がグサグサと刺さり、鋭利な石で切り傷を負ったりと、なかなか痛い思いをした。
それでも一晩寝ればほとんどの傷が治った。
体こそ万能だった。

日が流れるにつれて、日々、歩き方が変わっていった。それに伴って傷を負うことが減っていった。

どこを歩いても大丈夫だという信頼も待つようになった。たとえ岩場だろうが、藪の中だろうが、森の中だろうが、どこを歩いても大丈夫だという足の裏に対する信頼感。
それでいて出来る限り傷つけず、大事にしようという愛情も芽生えた。
足の裏に対するこの感情は生まれて初めての事だった。
一歩一歩が慎重な足運びとなった。
靴を履いて歩く時よりも時間はかかるけれど、ゆっくり歩くことで見られるものが多くあった。
 
 大地は生命で満ち溢れていた。
 芽吹いたばかりの小さな草
 長い年月をかけて作られた小石や流木
 静かに生きる苔
 川の中を歩けば、風と波が作った隆起が川底にある。
 
靴で大地との繋がりを遮断せず、裸足だからこそ、感じられるものが多くあった。
陰で湿った地は冷たく、キンと冷え、その後で太陽に照らされて渇いた地を踏んだ時の喜び。
森の地面を覆う、厚い苔を踏んだ時の気持ちよさ。
尖った石の上を歩いた後に、柔らかい土を踏んだ時の安心感。
地球は裸足を介して感情を揺さぶってくれる。
大地に平らな所などどこにもなく、どこもデコボコしている。
そのデコボコ、どんなに小さなデコボコにでも物語が詰まっている。地球が作った物語だ。 

岸辺はどこも動物の足跡だらけだった。
熊に狼、キツネにムース・・・中には小さな可愛い子供の足跡もある。
彼らは輝く夕日や朝日を見ながら歩いたのだろうか。
真っ暗闇の中、星やオーロラを見ながら歩いたのだろうか。
いつの日か、彼らが歩いた道を僕は歩いてゆく。
足跡を辿りながら歩いていると、すぐ目の前に、歩く彼らが見える様だ。

ふと僕の足が止まった。狼や熊の足跡に苔や草が生えているのだ。
他の地には生えていない苔が、足跡に寄り添うように。
その足跡を見て、僕は映画「もののけ姫」のあるワンシーンを思い出した。
シシ神様が森の中を歩く時、足を着けた瞬間にその場所から草木がニョキニョキと生えてくるワンシーンだ。
苔の生えた足跡は、川に沿って岸の上をどこまでも、はるか先までずっと伸びていた。
まるで動物達が大地に生命を吹き込んでいるかのように・・・

僕はハッとなって振り返った。大地には僕が付けた足跡が続いていた。
いつでも動物達の足跡は美しいと思っていた。
人間の裸足の足跡も美しいとその時初めて思った。
いつの日か僕の足跡にも苔が生え、草が育つのだろうか。
日本から海を越えて遥か遠くの地、ユーコンの荒野に付けた生命の足跡。

僕は裸足で大地を踏むとき、それがどこの地であろうと、ユーコンの地と繋がりを感じることが出来る。
  足とは地球と繋がることが出来る大切な器官。
カナダやアラスカの町中を裸足で歩いていると人々が目を輝かせて話しかけてくる。
「裸足!!すごいわ、素敵ね!」と。
そして僕はいつでもこう答える。
「地球が大好きなんだ!」
日本に帰り、裸足で外を歩いてみた。人々は変質者を見る様な訝し気な目で、僕を見た。
ある時、散歩中の両親にばったりと出会ってしまった。そしてこう言われてしまった。
「靴を履いてお願いだから。物凄い異様な光景よ」
人と地球との間に、物凄く大きな溝が開いてしまっていることを、僕は強く感じた。僕は再び靴を履いた。
 ※意識が小屋作りにすっかり移ってしまい、本の作成がなかなか進みません♪
 

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静かな生命

 僕はキノコに飢えていた。

 というのも、春~秋の半年間、僕はカナダとアラスカの荒野を1人で旅しており、キノコを殆ど食べていなかったからだ。日本に帰国後間もなく、キノコに飢えていたそんな僕に友人から声がかかった。

会津にキノコ狩りに行かない?」

その言葉を聞いた瞬間、頭の中には赤に緑、黄色と色とりどりのキノコがニョキニョキと生えてきて、口内にはヨダレがにじみ出た。断る理由も何も無かった。「うわっ、キノコ!!絶対に行きます!!」僕は即答した。

 

 福島県会津高原の檜枝岐村キリンテ小屋に集まった総勢13人の仲間達。泊った小屋は、築六十年を越える囲炉裏がある茅葺の古い家。昔春から秋の間、農作業をするために村人が使っていたそうだ。その殆どが50、60代の筋金入りのご老人ばかりだ。口を開けばもう何ものにも止められない。ゲラゲラと笑い声があっちこっちから戦場の弾丸の様に飛んでくる。長期間1人で荒野を彷徨っていたものだから、久しぶりの弾ける会話に僕は嬉しさを覚えた。荷支度を整え、僕らは3つのグループに分かれてキャンプ場の近くの山や森へと出ていった。

 

 この時期、マムシや毒蛇はもういない。靴と靴下を脱いでザックにしまい、ズボンをまくり上げて木々がうっそうと茂る森の中に、僕は足を踏み入れていった。森は秋色に燃えていた。黄色にオレンジ、赤と、頭上の葉や地面の落ち葉全てが紅葉に染まり、涼しい風が木々の間を吹き抜け、葉が宙で躍っている。透明な水を湛えた小川がチロチロと優しい音を奏でて森の中から流れ出ている。灰色の雲間から一瞬陽光が差し込み、薄暗い森の中、小川が光り輝いた。僕は見とれ、途方もない満足感に満たされた。その後すぐに日差しは流れてきた雲に遮られ、小川は姿を消してしまった。

 今年はキノコが少ないと地元の人達が口を揃えてそう言っていた。確かに歩いていても毒キノコすら殆ど見かけない。(ただ観察眼が無いだけかもしれない)僕らは森の奥へ奥へと入っていった。

歩いていると木々の間に、はるか昔から時代を越えて佇む苔むした大木の朽ち木が見えた。近づくと白く硬いキノコがびっしりと生えていた。名前も何も分からないキノコだった。はるか昔に幸運な種が地に落ち、芽を出してすくすくと成長し、何十年も生きて地球に生命を与え、やがて朽ち果てて今その体を次の生命に受け渡している。美しき生命の流れ。人間の寿命などちっぽけに見えるその壮大な流れに少し触れ、僕は大満足だった。大木の根元を見てみると、赤茶色のかさをしたクリクリのクリタケが数本頭を出していた。僕は出てきたよだれを拭き、プツッとナイフで茎を切って網袋に入れた。よし、今秋一番のキノコだ。

 再び歩みを始める。湿り気を帯びた枯れ葉がひんやりと裸足に心地よい。秋の大地が肌を透して体の中を上がってくる。喉に渇きを覚えた。しぶきを上げて流れる細い沢に入り、顔を突っ込んだ。締め付けるような冷たさに、足も顔も引き締まった。喉を通って新鮮な水が体の渇きを潤してくれた。沢から上がると小腹が少し空いていた。倒木を覆う苔の上に、小さな山ブドウがまるで誰かが置き忘れたようにちょこんと置いてある。小さな可愛い果実を1つ摘まみ、口に入れて噛んだ。プチッという感触の直後、渋みを帯びた濃厚な甘みがじんわりと口いっぱいに広がった。ほっぺたが落ちそうだ。凝縮された森の味。小腹を心地よく満たしてくれた。その近くの太い倒木の窪みを覗いてみると、白い卵が7つ、宝石の様に置いてある。季節外れの卵。もう目前には、雪積る極寒の冬が迫っていた。これから孵化することはないであろう。親が見捨てたのか、それとも他の動物に食べられたのか…不思議な物語が詰まった森の忘れ物だった。

 

 小屋に戻ると、続々とほかのメンバーが戻ってきて、各自獲ってきたキノコをばらばらと出す。ブナハリタケ、ヒラタケ、なめこ、クリタケ…。少しだけ。やはり今年はキノコが少なかったようだ。(いや探し方が悪いだけかもしれない)

 その夜、土砂降りの雨が降り、湿った暗闇が会津を覆った。森のはずれに佇む築60年の小屋の中にはほの暗い光が灯り、静かに薪ストーブのぬくもりが漂い始めた。冬場は除雪機が入らない地にあるキリンテキャンプ場。今年最後のお客さんである僕らに、キャンプ場のおばちゃんが、保存食のブナハリタケをボール一杯分けてくれた。数日前から出始めたというカメムシが、冬眠する為に、小屋の中に続々と集まってくる。何百匹と集まってきた。壁に床に電球に、小屋の居当たる所カメムシだらけ。そんなカメムシに全く動じることなく、僕らの終わることなき大宴会が幕を開けた。天ぷらに、シチュー、鍋と、新鮮なキノコ料理に僕らは胃を躍らせた。

 翌朝、眠たい瞼をこすり、小雨が降る中、小屋のすぐ傍を流れる小川を覗いた。透き通った水の中に1匹のイワナが見えた。雨に撫でられる川の中を気持ちよさそうに身をくねらせている。そんなイワナを見て、僕らは洗剤を使えなかった。あのイワナは、ずっと昔から家の傍に住みついている。おばちゃんがそう言っていた。森の小さく静かな生命。木々は紅葉に染まり、もうすぐ目の前には冬が迫っていた。。

 

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f:id:Yu-Ma:20171108065700j:plain森の中に建つログハウスでやる気のない作戦会議

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素晴らしい朝

 夜明け前だった。土手の上に上がり、振り返ると僕は固まった。見事なまでのオレンジ色の朝焼け空が、町の上に広がっていた。こんなに綺麗な朝焼けは滅多に見られない。あまりの美しさに僕は見とれた。体中が嬉しさに満ちていた。

「おはようございます。綺麗ねぇ今日の朝日は!」はっとなって振り向くと、1人の見知らぬおばあちゃんが直ぐ傍にいた。

「いやぁ凄いですよ今日のこれは!!!!ここ最近一番です!!」

「そうねぇ私もそう思う!私は毎朝こうして歩いているの、朝はやっぱり家の中で迎えるよりもこうして歩くべきね」

 いつしか僕らは朝日を浴び、話しながら土手の上を歩いていた。お互い名前も分からなかった。

 前方から新たにおばあちゃんが2人やってきた。

「あらおはよう!そのお兄さんは?」2人が僕を見て言った。

「私の新しい彼氏よ」どうやら僕らはこの短い間で恋人になっていたらしい。数十も年は離れ、名前すら分からないけれど、そういうことらしい。なかなかいいではないか。

 僕らは淀むことのない会話を交わしながら尚も歩いてゆく。話を聞いていると、おばあちゃんの目には、この今の世界に明るい未来は見えていなかった。破滅が見えていた。一体何年何十年そんなことを思い続けて生きてきたのだろうか・・・。聞くうちに嫌などんよりとした空気が流れてきた。僕はそれに包まれることなく、ウキウキしながらこれからの小屋作りの計画やら何やらの話をした。これからの生活は考えるだけで楽しすぎる、ウキウキしないわけがない。そんな僕の話を聞いて、おばあちゃんは言った。

「今の世の中に、そんな事をする人がいるんだねぇ!なんだか少し未来が明るくなったわ!」この言葉がさらに僕にエネルギーを与えた。先ほどまでの嫌な空気は浄化され、明らかに周りの空気が変わった。

「いや、僕みたいなのはこの世界にいっぱいいますよ!!これからも増え続けます!」

 土手沿いに建つ僕の母校の中学校が近づいてきた。土手を降りて中学の脇を歩いてゆく。町中に入って暫くしてから僕らは別れた。輝く朝焼けはすっかり薄れ、赤々と太陽が世界を照らしていた。淡くて楽しい一時であった。早朝の外には素晴らしいものがゴロゴロと転がっていた。

 

 

 

 昨日、大澤校長先生(当時のサッカー部の顧問)に招かれ、昨日母校鴻巣西中学校の全校朝礼で僕は登壇し、自由で可能性に満ち溢れた若い若い子供達を前に少しだけ話をさせて頂いた。

 500人の眼差しを前に話すのはかなり久しぶりの事で、見事に緊張し、話したいことがうまく言葉にならず、10分の1くらいしか伝えたいことが言えなかった。見事なまでに砕け散ったと思う。

 質問タイムに入り、一人の体育の先生が僕に言ってきた。

「いやぁ、八須君、君の事はよく覚えているよ!クレア鴻巣(合唱祭等を行う大きなホール)の中に、外で捕まえたカエルをポケットに入れて持ち込み、会場に大混乱を巻き起こしてたからね!!覚えているかな?」

カエル・・・?確かにカエルは好きだけど、僕が持ち込んで混乱させた???全く覚えていなかった。

「・・・いや、まったく記憶にないです」恐らく誰か違う人の事を言っているのだと思った。

 

 その後、好奇心に輝く数人の先生方が僕の所にやってきて、会話攻めにあった。

そに自然の暮らしいいなぁ!

私もやりたい!!

小屋が出来たら遊びに行ってもいいかな?いや、作りに行ってもいいかな???

 話しかけてくる先生方は皆自然を愛し、そして自然を望んでいた。共感してくれる人達に出会えて、僕は嬉しさで弾けそうだった。

 

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友人が作ってくれた、森のジャム(山ブドウ)!!!!とキンカン酒!!!!体が大喜びである!!!!!僕の元気の源!

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運命の地

 僕は窓の外を見た。木々の隙間から見える夜空には無数の星が輝いていた。人里離れた森の中、音が無い静かな夜、街灯も騒音も無い、何ものにも邪魔されずに純粋な眼差しで見ることのできる夜空。綺麗だった。突然、心地良い静寂を破って携帯電話が鳴り響いた。僕は電話に出た。

「久しぶり八須君、今どこにいるんだ?」

以前東北を旅していた時に温泉で出会った金山町(福島県・奥会津)の町会議員さんからだった。

「今、君の故郷(埼玉県鴻巣)の市議会議員さんと金山町(福島県会津)で飲んでいるんだ。それでどうやら君の事を知っているそうなんだ。今電話変わるからね」そう言って電話は女性に変わった。

「もしもし八須君?幼い頃よく遊んでいた市川です、覚えてるかしら?」

市川…市川…市川…頭の中で名前を連呼して遥か昔の記憶に呼びかける。2秒ほど呼びかけた。

「・・・いや・・・」記憶からは市川さんの顔も名前も全く何も出てこなかった。

「まぁまだ小さかったからね、覚えてないのは当然ね!幼稚園に入る前の小さかった頃に、親子同士でよく遊んでいたのよ」

「ごめんなさい、全く覚えていないです」

「今度親に聞いてみな、知っているはずだから!それはそうと今色んな所を旅しているんだって!?」

「いや、旅はもう落ち着いてこれから丸太小屋を建てるんです!」

「丸太小屋!!!!?どこに?」

「それが今、北海道か会津かと迷ってて・・・」

「金山町なんかどう?君の故郷鴻巣姉妹都市なのよ」

 この一言は強烈だった。強烈な巡り合わせを感じた。僕は決心した。丸太小屋は福島県・金山町に建てよう!金山町に移り住もう!!と。

金山町・町会議員さんに再び電話が戻った。

「それじゃあ、君の好きそうな最高の土地を探しといてあげるから!!今度来た時に案内するよ!」

 

 後日同じく金山町で出会った町のマタギ・猪俣さんにその件について電話した。

自然を愛する者同士、考えるところが似ているのだろう。猪俣さんは僕の好みを察したようで、土地はゴミゴミした所じゃなくて静かな場所を頼むよ!と助言をしてくだったそうだ。これ程好意を持って、訳の分からない若者を協力してくれる町があるだろうか・・・僕は感動した。

 

 森が育んだ澄んだ湧き水、瑞々しい空気、豊富な山の恵…僕の自然大好きワイルドライフがこれから始まる!!!!!!!

 

 その土地にある素材を使って一生愛せる素晴らしい家を作り、その空間にいる全生物と共に季節や日々の変化を共にし生きて行こう!ミツバチを飼い、木を植えて森を作り、水に空気をどんどん綺麗にしよう!!メープルシロップなんかを作ってもいいなぁ、パンを焼いてもいい!グミや山ブドウでジャムを作るのもいい!!生命力みなぎる野菜を偉大な地球と共に作ろう!!!

 

 僕は今週末にもう会津に行く。雪が降り積もる前に土地を見て回るのだ。

今年の冬には木を切り、石を集め始めようと思う!!!

やらなければならない楽しい仕事が沢山だ!!!!

 

※(僕の話を聞いて、過去多くの人がこんなふうに勘違いした。八須は、どこか人の入らない山奥に引きこもり、文明社会から隔絶された世界で、人に会わず、機械もなにも使わず、原始人みたいに生きていくんだ・・・・と。

全く違います!!!!)

 

森大好き!!

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荒野に生きる男・アンディ

 アラスカ・ユーコン川の岸辺の森の中で、僕はある1人の男と出会った。名はアンディーという。

 アンディーは22歳の時1人、自由とロマンを求めてワシントンからアラスカへ渡ってきた。イーグル村という小さな村から20キロ程川を下った荒野の森の中に、自分で家を建て、10匹以上の犬と共に1人で暮らしている。自然をこよなく愛する野生の男だ。

 夏の間は冬に備えて食料を作っている。耕した畑で野菜を育てて乾燥野菜を作り、遡上するサケを捕まえ、干し鮭や燻製を作っている。秋から冬にかけては森の動物を捕らえ、その肉を食べて生きている。50歳を越えるアンディからは老いというものを、全く感じられない。発する言葉に目の輝き、一つ一つの動作からは、瑞々しい生命のエネルギーが満ち溢れていた。

 過酷な大自然、荒野の中で、自分の力のみで生きていく。それは男ならば誰しもが一度は夢見る、いや・・・あまり見ないかもしれないが。僕にとって荒野で力強く生きているアンディーは、まさにヒーロー。かっこいい真のヒーローだった。

 

 僕はそんなアンディーと3日間共に過ごした。ジャガイモの種を植え、イチゴやハーブの植え替えをし、支流で魚を獲った。そして地球について、この世界について語り合った。へたくそな英語に嫌な顔1つせず、親身に聞いてくれた。僕の話がぶっ飛んでいるのか、話しても僕の身の回りには、話が合う人は少ない。しかし、アンディとは話が合った。共感者がいてくれることはどれ程嬉しい事か・・・・。彼と共に過ごした数日間は、今でも鮮明に胸に焼き付いている。空をふと見上げると、僕はいつでも思い出す。この今照っている太陽や月を、僕が植えたジャガイモやイチゴも見ているだろうかと。僕は太陽や月に向けて願いを込める。

 

 

イチゴとジャガイモとハーブに光を注ぎ、アンディにいつまでも力を与えて欲しい、と。僕は月と太陽と空で、海を越えて遥か遠くのアラスカの荒野で生きるアンディといつでも繋がっている。

 

 そんなアンディが、僕のある持ち物に、物凄い興味を抱いた。包丁である。その包丁は冬、青森県・深浦で偶然出会った鍛冶職人、古川お爺さんから貰った魂のこもった大切な、渋い包丁だった。料理をするときに何気なく使っていたその包丁をアンディーが見た。

 何だそれ?その包丁は何だ?かっこいいな!何処で手に入れたんだい?その彫ってある文字はどういう意味?その鍛冶職人とはどこで知り合ったんだ?一体いくら位するんだろうか?

 好奇心がにじみ出ている顔から、無数の質問が僕に投げかけられた。アンディーが包丁を欲しがっていることは一目瞭然であった。

 「一緒に包丁の取っ手を、俺が獲った動物の骨で作らないか?」そう言って、僕らは1日かけて包丁の取っ手を黒熊とムースの骨を加工して作った。輝かしい思い出である。

 

 日本に帰国後、早速僕は古川さんに電話し、包丁を一丁購入した。それを包んで、郵便局に行った。

「これは何ですか?」受付の女性が訪ねてきた。

「包丁ですよ、アラスカの友達に送るんです。送れますかね?」

「包丁ね・・・ちょっと待って」そう言って何やらパソコンをカタカタ。

「送れない品目の中に、”飛び出しナイフ”てのがあるんですけど・・・」

飛び出しナイフ???そんなの初めて聞いた名前だった。飛び出すナイフなのだろうか?

「何ですかその飛び出しナイフっていうのは?」

「ごめんさい、私も初めて聞いて・・・」

調べようにも携帯を持ってなくて調べられず、他に客のいないがらんとした室内で僕らは暫く考えた。結局飛び出しナイフがどんな物なのか分からなかった。考えても分かるはずがなかった。まぁ個人使用のみ!!と書いておけば大丈夫でしょう!という結論に至り、アラスカの荒野へ向けて包丁は旅発っていった。(森に住むアンディには住所は無く、一番近いイーグル村に送った。いつかアンディが村に来た時に受け取るだろう)

 台風が去り、雲のない晴れ渡った静かな夜空に、オレンジ色の月がぼんやりと浮いている。アラスカの大自然の中、アンディは元気だろうか。今1人で何を見て感じているのだろうか。包丁、無事に届いておくれ!

 

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