旅する蜂ブログ

奥会津の地球暮らし

~マタギの見習い~ 自然を愛し、地球の詩を書き、奥会津の山奥で素朴に暮らす

大嵐が来た

僕の住む山の谷の小さな集落に、大嵐がやって来た。
嵐の源は友達だ。
友達の大群が突然遊びにやって来た。

先ず襲われたのは師匠のラーメン屋だった。
店内ぴっちぴちに入り、がいがい騒ぎだす。
ラーメンはずるずると腹の中に吸い込まれていった。

腹を満たしたその次は蜜蜂だった。
新たな巣を求めて分蜂真っ最中の蜂達。
そんな蜂達の元に集まった僕ら。
初めて見る世界に大興奮。
蜜蜂達もびっくりしたことだろう。

蜜蜂達にお別れをし、次に近所の田植えで忙しいおじちゃんを引っ張って森の中へ山菜採りに入って行った。
コゴミにウド、コシアブラにウルイ・・山菜達は次々に摘まれてゆく。
大いなる山の恵みに包まれた。

家の庭にテーブルやら椅子やらを並べ、ブルーシートで即席の屋根をこしらえた。
簡素な庭は熟練キャンパー達の手により、一瞬のうちにバーベキュー場と化した。
焚き火をおこし、日が落ちる頃、盛大な山菜パーティーの幕開けだ。
ワイワイ騒ぎに釣られて酒一升瓶を片手に続々と集まってくる近所の住人達。
山奥の集落は一気にお祭り騒ぎ。
いくらはしゃいでも広い集落は近所迷惑とはならない。
深夜遅くまで大声で歌い、腹を抱えて笑い転げた。
長くこの地に根をはって生きてきた木は焚き火の炎となり、僕らの空間を暖め、豊かなものへと変えてくれた。
その命を盛大に楽しむことが供養となる。
12時過ぎ、ついに力尽きた僕らは死んだように眠りについた。

目を閉じた瞬間に朝がきた。
死んでしまった焚き火を再び起こし、朝日を浴びながら肌寒い空気のなか、朝のコーヒーを楽しんだ。
昨日とは真逆に心は落ち着いていた。
手作りの極上のフルーツジャムでパンを頬張った。
ほっぺがとろけた。
日が上るにつれて僕らのギアは再び上がってゆく。
蝉の大合唱の如く、たちまち笑い声が沸き起こる。
解体中の小屋に、これから家を作る地にいき、あれやろうこれ作ろう!!と盛大に妄想と夢を広げた。
想像は無限大、それが元となり創造が生まれる。あのワイワイした空間には無限大の可能性が眠っていた。
最後温泉に入って僕らは散っていった。
三峰山岳会の友達による1泊2日の大嵐。
これからこの集落は、頻繁に特大の大嵐に見舞われることになるだろう!
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繋がる世界

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熊にかじられてしまった巣箱。
甘い蜂蜜の匂いに狂喜乱舞し、舐めること一心にかじり、引っ掻いたのだろう。
この熊の傷痕が、僕の記憶をほじくった。
そして昔読んだ本を思い出した。
ロシア・シベリアの荒野の探検物語、デルスゥウザーラだ。
熊が木上にある蜜蜂の巣を襲っているを見た森の人・デルスウが、蜂達の命であり貴重な食料を横取りするなと熊を一喝して追い払う、うろ覚えだがこんなシーンである。
人と蜂、熊と蜂、熊と人、森と蜂と熊と人、それらひっくるめた地球との関係、これからの時代に問われる大切な問題だ。
この世界の全てのものは大小関わらず必ず繋がりを持っている。
全ては繋がっている。
太陽に輝く星に月、森に大地に空気、川に海、全てがはるか太古の昔からひとつの大きな大河の流れの様に繋がっている。
それはこの世界の生命の川だ。
その繋がりによって人も動物も全ての生き物が存在し生きている
それひとつで生きることなどなにものも出来ない。
この世界と自然をこれからじっくりと自分自信の目を通して見ていこう!

海亀

先を先行していた仲間が叫んだ。 「あ、海亀だ!!」 その言葉に引き付けられ、僕を含めた後ろをゆく仲間達が集まった。 目に写ったのは、岩に打ち付けられた海亀の死骸だった。 僕らが行くと、群がっていたヤドカリの群がワッと四方八方に散っていった。 それは大地で生まれ、海に生き、そして再び大地へと戻ってゆく命だった。 彼の命には、彼の豊かさが込められている。 海の中で過ごした幻想的であろう幾度の満月の夜。 潮の流れに乗り、泳ぎ、その目と耳と鼻・・五感で体感した数々の世界。 嵐に天敵、何度も何度も危険な目にあったことだろう。 楽しかったことも、感動したことも、悲しくなったこともあるであろう。 ヤドカリ達は海を、海亀を食べていた。 彼のそれら全てを食べていた。 彼が生きて経験し体感した全てがヤドカリ達を介して大地と海に染み込んでいっていた。 一瞬の間にも億万の生死が渾然一体となり動き続けている地球。 地球はそうやって、年を重ねるにつれてその深み豊かさを増してゆくのだろう。 それはヤドカリと海亀の発する命の物語だった。 これだけでも南の島を旅して良かった。 f:id:Yu-Ma:20180531080817j:plain

南国物語

25歳の僕が最年少であった。
そこから30代、40代、50代、60代、そして75歳の長老と実に幅広い年齢層を成す怪しい集団が、巨大なザックを背負い、沖縄の離島・西表島の地に降り立った。
暑い夏の日差しが降り注ぐ4月の終わりのことだった。

そこは静かな浜辺だった。
植物がうねり、這い、鬱蒼と生い茂るジャングル。
何処までも広がる大海原。
それらに阻まれ、道の無い、普通、人の入れない浜辺であった。

潮の満ち引きに合わせて、干潮を狙って僕らはその地から、島の海岸沿いを泳ぎ歩き、時に流れていった。
1日の終わりに砂地にタープを張り、流木を拾い集めて火を起こし、捕った貝やエビ、魚を料理し、食し、新鮮な生きた海を自分の命に取り込んでいった。
澄んだ海に泳ぎ出た。
リーフが突然切れ、絶壁が現れた。
そこからは底の見えない深海が広がっていた。
僕の小さな体など比べ物にならない地球の壮大さに打たれ、恐怖、畏怖の念に包まれた。
海の中は地上とは別世界、神秘そのものであった。
満月がジャングルの影からのぼり、やがて凪いだリーフの海面を月明かりが照らしだす。
ぼんやりと明るい世界に包まれた。
どこからともなくフクロウの鳴き声が鳴こえてきた。
横たわると耳元からカチカチと小さな音がそこらじゅうから聞こえてくる。
ヤドカリだった。
小さなヤドカリの群が珊瑚の残骸の上を歩いていたのだ。
茂みの中で、蛍の灯が灯った。
夜が更けるにつれてジャングルの音は多彩を増していった。
シャワー等無い。
塩を落とさないことに初日は少し抵抗感があったものの直ぐに馴れた。
塩にまみれたまま、心地よい焚き火の温もりで眠りにつく。
耳を地に付けると地中からガリガリと音が聞こえてきた。
カニか何か生き物が真っ暗い地のなかで生きているのだろう。
エッエッエッエッ!!と時に突然得体の知れない鳴き声に叩き起こされ、寝ぼけたまま辺りを見渡すが見えるのはただジャングルの暗闇。
不思議な世界、それは神秘的な一夜の連続だった。
海と大地の音、あたりを包み込む世界を五感で感じとり、魂が洗われ、皆が皆、野生、本来の自分を取り戻していった。
年の差も越えて語り合い、朝から晩まで笑いあった仲間達と共に過ごした日々、それらは生涯忘れることなく、深く刻み込まれる、一生ものの体験だった。
世界は広がり、夢がまた枝を伸ばした。

南の空気に存分に浸かり、心身共に緩みきった頃、西表島の旅が終わった。
そしてこれからまた始まるのは、南とは対象の北の地、会津の森の生活だ!
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旅と本

まだ雪の残る金山町から何百キロ南の、海を越えてはるか南の島のジャングルに行くために僕は飛行機に乗った。
暫くの間、僕は南国の水に空気に大地に海に抱かれてくる。
向かう先は西表島だ。

家作りに蜜蜂に樹液採集、薪集めに畑に山菜祭りに芽吹く新緑の森歩き・・・勢いに乗ってきた春の仕事全てを、置いてきた。

東北の地では決して見れない景色、食べられないもの、吸えない空気、南の島のそれら全てを思い切り堪能しよう!
新しい風にあたり、南の自然が与えてくれる新たなインスピレーションを求めて僕は旅立った。
10人ほどの仲間と共に。

大海原のはるか上空、晴天の降り注ぐ陽光の下、大興奮に包まれる飛行機の中で、持ってきた本を開いた。
古びた本だった。
土の中から発掘された化石みたいな本を見て、
「え、それ何回読んだの????」
隣から驚きの声があがった。
ユーコンの荒野の思い出がうんとつまった本だ。
それは雨風の唸る嵐のテントの中で、月光に輝く湖畔で、大河に揺れるカヌーの上で、大荒野の中で何回も読んだ、アラスカの泥と垢が染み込んだくたびれた本だった。
何回読んだか知れないが、読み始めると僕の中に刻み込まれたユーコンの荒野が、吹き出してきた。
目にし耳にし感じたその全てが美化されていて、輝かしく懐かしかった。
忘れかけていたあの時の興奮が甦ってきた。
僕にとって本は、過ぎ去った過去から色々な物語を投げ掛けてくれる宝物だ。

そしてこのユーコンの思い出のつまった本に、今回は西表島が加わる。
いつの日か、再びこの本を開いたときにユーコン西表島の混じったこの本は、どんな感動を与えてくれるのだろうか。

1週間ちょっとバイバイ金山町!
そして行ってくるぜ西表島のジャングル!!
貝に亀にバナナにアダンに木登りとかげに珊瑚・・・南の島の生き物に沢山会ってくる!!!
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小屋作り

「この小屋をおめーにやっからよ、自分で解体して好きなところに持っていって建てるってのはどうだ?」
2階建ての小屋を目の前に、隣村の政一さんが僕に言った。
その瞬間、めちゃめちゃ面白そうじゃん!!!僕の内部で好奇心が大爆発を起こした。

でも、僕は小屋の構造や建て方など全く分からない。
明らかにこれは、今の僕の能力以上の仕事だった。
これは人生からの挑戦だな、と思った。
この話を断ればそれまでのこと、そこからまたこれまでの人生は続いてゆく。
でももし話にのり、小屋を自分で解体して作れば、なんだか1つ2つ程、今より上の世界へといける気がした。
例え失敗しようと成功しようと、この大いなる挑戦はこれからの人生で必ずプラスになるだろう。
挑戦する価値が十分にあった。
思えばこれまでの人生、こんな挑戦状を何度か叩きつけられてきた気がする。
世界はいつでも人に挑戦する機会を与えてくれるのだろう。
それを受けるか受けないかは自分次第であり、世界は他でなく自分自身で変えてゆくのだ。

僕は小屋を貰った。
築70年程の作業小屋で、小さくて住むのに十分。
今はもう何も使われずに朽ち果てるままの小屋だ。
建てた人の思い、期待、喜び、この小屋に染み込むもの壊さずに、ここで思いっきり生きて僕が再びこの小屋の息を吹き返させてあげよう!

こうして僕の小屋作りの日々が始まった。
壁は何にするのか、内装をどうするのか、窓はどんな風にするのか、薪ストーブはどこに置くのか・・・考える考える考える、解体しながら想像がどこまでもどこまでも広がってゆく。
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白樺の樹液



ザックにタンクを入れ、僕は夜が明けたばかりの外に出た。

太陽はまだ山の影に眠っているが、辺りはもうすっかり明るい。

木の枝先、森の中、家の屋根の上、そこら場から小鳥の鳴き声が聞こえてくる。

世界は目覚めていた。

それは春と朝を喜ぶ、歓喜の歌声だった。

小鳥の声をただ聞いているだけ清々しい気分になる。

心が、自然と洗われているのだろう。 

鳥の鳴き声は、森からの心のシャワーである。

世界中の人が朝、10秒でも良いから鳥達の声に耳を澄ませることが出来たら世界はきっと平和になることだろう。


小さな集落を抜け、僕は山の奥へと続く細い道に入っていった。

ひんやりとした霧が森の木々の間を流れ、早朝の澄んだ空気に包まれた。

気持ち良かった。

その気持ち良さと共に期待感が膨らんでゆく。

沢山溜まっているだろうか?

膨らみ続ける期待は足を軽くし、疲れることを知らずにどんどん山の上へと登って行った。


やがて坂は緩まり、なだらかな平地になると浅黒い森の中で白く輝く木が見えてきた。

白樺の木だ。

いよいよ歩く足は速まってゆく。

タンク一杯に液体が溜まっていた。

樹液だ。白樺の樹液である。

昨日、師匠昭夫さと一緒に仕掛けておいたのだ。

蓋を開け、ボトルに注いで飲んでみた。

ほんのりと透き通った甘み、その瞬間、木が、森が、春が、ここまで来るまでに聞いた鳥の鳴き声、見た景色、森の静けさ、白樺の生きたこれまでの物語、水の物語、全てが身体の中に入ってきた。

感動が全身にほとばしった。あまりの嬉しさに顔がにやけてくる。

寒くて暗い冬を堪え忍び、春を迎え、長い眠りから覚めて今、木は天に思い切り枝葉を広げ、思い切り生きる為に、雪解け水を力一杯吸い上げていた。

水は上へ上へと上ってゆき、新芽となって空一杯にほとばしる。

それは厳しい環境下での、木の生きる力、木の生命力そのものである。

ビタミンなんとかやカルシウム等の栄養が重要視される現代の世。

それよりも命を燃やす力、生命を維持する力、生命力こそが栄養素なんかよりももっともっともっともっともっともっと根本的で、大事なものだ!

その生きる力、偉大な力がもろに口、喉を通って僕の中に入ってきた。

身体中からエネルギーが溢れだした。

どんな病気もこれ飲めば治るな!と思った。

水は水でも湧き水とは全く違う水だった。

木の中を通ることによって、水はこうまで変化するものなのか。

木は心と魂を持った生きた工場だった。


カナダとアラスカにいた頃によく目にし耳にした白樺シロップ。

この樹液を煮詰めればシロップになるのだろうか?来年挑戦してみようと思う!

この町を、木のシロップと蜜蜂の蜂蜜で溢れかえる町にしていこう!


これから毎朝、起きて直ぐに僕は大好きな森にゆく。

昔からずっとやりたかった、憧れであった樹液採集の日々が始まった。


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