旅する蜂ブログ

奥会津の地球暮らし

~マタギの見習い~ 自然を愛し、地球の詩を書き、奥会津の山奥で素朴に暮らす

私生活

森の停留所

「バス停いらないか?」 集落の小さなラーメン屋のなかでおじさんに言われたこの一言が始まりだった。 僕は、集落のバスの停留所をそっくりそのまま貰った。 もう使われず、新しい道路を作るので壊してしまうそうだ。 まだまだ使える停留所、壊すのは勿体無…

新しい朝

地球誕生以来、今までにない新しい朝が毎朝毎朝流れるようにやってくる! テレビや新聞等が流す世の歪みに朝から心かきみだされ、翻弄されることなく、真っ直ぐに地球を見れることは贅沢なことなのだろう。 鳥の鳴き声、川のせせらぎ、空気に空に森に山、自…

大嵐が来た

僕の住む山の谷の小さな集落に、大嵐がやって来た。 嵐の源は友達だ。 友達の大群が突然遊びにやって来た。先ず襲われたのは師匠のラーメン屋だった。 店内ぴっちぴちに入り、がいがい騒ぎだす。 ラーメンはずるずると腹の中に吸い込まれていった。腹を満た…

繋がる世界

熊にかじられてしまった巣箱。 甘い蜂蜜の匂いに狂喜乱舞し、舐めること一心にかじり、引っ掻いたのだろう。 この熊の傷痕が、僕の記憶をほじくった。 そして昔読んだ本を思い出した。 ロシア・シベリアの荒野の探検物語、デルスゥウザーラだ。 熊が木上にあ…

海亀

先を先行していた仲間が叫んだ。 「あ、海亀だ!!」 その言葉に引き付けられ、僕を含めた後ろをゆく仲間達が集まった。 目に写ったのは、岩に打ち付けられた海亀の死骸だった。 僕らが行くと、群がっていたヤドカリの群がワッと四方八方に散っていった。 そ…

南国物語

25歳の僕が最年少であった。 そこから30代、40代、50代、60代、そして75歳の長老と実に幅広い年齢層を成す怪しい集団が、巨大なザックを背負い、沖縄の離島・西表島の地に降り立った。 暑い夏の日差しが降り注ぐ4月の終わりのことだった。そこは静かな浜辺…

小屋作り

「この小屋をおめーにやっからよ、自分で解体して好きなところに持っていって建てるってのはどうだ?」 2階建ての小屋を目の前に、隣村の政一さんが僕に言った。 その瞬間、めちゃめちゃ面白そうじゃん!!!僕の内部で好奇心が大爆発を起こした。でも、僕は…

白樺の樹液

ザックにタンクを入れ、僕は夜が明けたばかりの外に出た。太陽はまだ山の影に眠っているが、辺りはもうすっかり明るい。木の枝先、森の中、家の屋根の上、そこら場から小鳥の鳴き声が聞こえてくる。世界は目覚めていた。それは春と朝を喜ぶ、歓喜の歌声だっ…

朽ちた老木

近くの畑に、朽ち果てた1本の桐の老木が佇んでいた。 曲がりくねり、半分以上皮が剥がれ落ちている幹にはキツツキや虫食いの穴が幾つも空いていた。 蜜蜂の精にとり憑かれたように無我夢中で巣作りに没頭する僕に、隣のお爺さんがその老木を譲ってくれた。 …

偉大なる懐

「山を手入れしてくれないか・・・」 隣のおじさんからの仕事だった。 場所は僕らの集落の直ぐ裏にたつ小高い山。 以前その山で杉の間伐をやったそうだ。 しかし、運び出すのが大変で木は切りっぱなしで放置されている。 それらの木を山から出して掃除してほ…

波乱万丈の養蜂物語

今朝起きてみると、今まで水が少なかった用水路にはドウドウと音をたてて、勢い良く水が流れていた。 焦った。 灰汁や匂いをとるために丸太を浸けておいた場所に全力でかけていった。 呆然とした。 浸けておいた丸太が跡形もなく流されていたのだ。 目の前に…

ミツバチの巣作り

隣に住むお爺さんから桐の木を斬り倒して欲しいと頼まれた。 見てみると、その桐の木は電線の方に大きく傾き、枝は電線に覆い被さっている。 風や雪で倒れた際にはえらいことになってしまうだろう。 早速僕らは切りにかかった。 梯子をかけ、ノコギリを枝に…

薪集め

丸太は重かった。 多くの命の積み重ねで出来ている大地。 そこに根を張り、何十年も生きてきた木々の命は重い。 重いはずである。 その重みで身体がきしんだ。 その重い丸太を1つ1つを持ち上げては山の斜面を転がし、落とし、持ち上げ、運んでトラックに積…

春の朝

目が覚めて歯を磨き、まだぼけーとしている頭を抱えたまま家を出た。 近くの泉で澄んだ水を身体に流し入れて朝を取り込み、まだ日の昇らない森の中へと入ってゆく。 積もった雪は早朝の寒さでカチカチに凍りつき、足を捕まれることなく何処へでも歩いて行け…

3月の頭、僕らは嵐の中にいた。 雨の混じった風が唸りを上げて吹き荒れ、木々がゆっさゆさ揺さぶられていた。 そんな嵐に興奮し、声を高らかに天に向かって声援を飛ばしている初老がいた。 「いいねぇ!!どんどんどん吹き荒れろ!!」 ブルーノさんは少年…

森のフクロウ

夕暮れ、タオルと着替えが入ったリュックを背負い、僕は家を出た。 向かう先は温泉。 徒歩20分位の共同浴場、八町温泉だった。 それは日々の日課だった。暫くすると、前方の路上に何か落ちていた。 近づくと、それは泥にまみれたきったないお菓子のビニール…

田舎の醍醐味

「明後日13日(2月)は空いてる?」 それはお誘いだった。 13日は丁度仕事も何も予定はなかった。 どこに行くのか、誰と会うのか・・・何がなんだか詳しくよく分からなかったが、それは血沸く面白そうなお誘いだった。12日の夕方、僕らは旅立った。 金山町から…

静寂

日が暮れた夜、僕は囲炉裏で小さな火を起こす。 暖かい炎を前にご飯を食べて生を受け、読書して世界中を命の危険も無しに思う存分旅し、時に夢想して色んな発見をし、1人を楽しむ。 ストーブとは違い、自然の発する音はなんと心地いいのだろう。 1日のこの…

エッセイのささやかな全国デビュー

自由。自由と聞いて、まず頭に思い浮かぶものがある。自由研究だ。小学生の夏休みの課題にあった、「自由研究」である。 当時まだ小さな小学生だった僕は、やるもやらないのも自由。それが自由研究だと思っていた。だから僕は当然、やらなかった。 夏休み明…

旅する本

1年前、東北を旅している時に、青森県のある小さな港町で、僕は1人のおじさんと出会った。 そのおじさんは僕を潮風に晒された小さな家に招き、酒を飲みながらこれまでの人生の物語を淡々と話し聞かせてくれた。 おじさんは昔、罪を犯し、5年間牢屋の中で…

今日を生きる意味

「雪かきを手伝ってくれないか?」 近所のおじさんのお願いだった。 断る理由も意味もなく、答えは勿論オーケ!仕事が終わり、夕方から雪に埋もれた家を掘り出し救出した。 時計を持たないのでどれくらいの時間かいてたのか分からないけれど、気がつけば全身…

彼は音楽家、魂を揺さぶる音楽家

福島県の各地を転々とし、2週間に及ぶ木こり研修が始まった。 (僕はこれから‘’木こり‘’になるのだ)男女含め、続々と集まる10数人の人達。 その中で、一際強烈なオーラを放っていた男がいた。 その男は、なにやら背中に巨大はホタテ貝?鍋?みたいなものを背…

「家」福島県の山奥の小さな集落に住み始めて1ヶ月が過ぎ去った。変化に富んだ日々を、これまで毎日過ごしてきた。つい2日前も、4人の友達が突然遊びにやって来た。個性の強烈な、自然と遊びが大好き愉快なおじさま達だ。その内の2人はすぐ近くの山へバッ…

鹿狩り

朝、突然携帯が鳴り響いた。金山町のヒーロー昭夫さん(マタギ)からだった。「今から山に行かないか?」「行きます!」 寸秒たたずの即答だった。マタタビ細工の予定が入っていたのだが、山に一瞬のうちに押し潰された。 1月には珍しいという冷たい雨のなか…

今年は鮭が高くて買えない!という話をちょくちょく耳にする。スーパーに行かない(そもそもスーパーが無いので行けない)ので全く分からないが・・高いのだろうか? ユーコン川を旅してる時、命を燃やし、3000キロの川を遡るなん十なん百匹もの逞しい鮭達を見…

福島県の奥の方にある集落暮らし1週間目

会津の、奥の奥の方にある小さな集落で家を借り、住みはじめてそろそろ1週間がたつだろう。昨日、朝起きると世界がえらいことになっていた。一夜にして雪が、すべてのものを覆っていた。 道も庭も車も・・・・前日は何ともなかったもの全てが雪で覆われてい…

「漂流者の仮住まい」

車のドアを開け、薄く積もる雪の上に降り立った。目の前に建つのは僕の体の100倍~1000倍位大きな一軒家。古く、中に入るとずっしりと年季の入った息が吹きかかる。整然とした室内。1人の男が住むには十分すぎる、いや広すぎる位だ。そこは、これから僕の仮…

小屋を建てる地

僕は自転車から降りて辺りを見回した。滅多に車の入らない地は静けさに満ちていた。川の流れる音が絶えず響き渡り、気分を静めてくれる。この場所を訪れるのはこれで3度目だった。訪れる度にこの場所が好きになってゆく。 そこは、部落から100m程離れた山に…

地球と大地

大地 荒野の旅で僕は靴を脱いだ。僕は大自然の中で常に裸足だった。幼少期、僕はいつでも裸足で過ごしていた。小学校に上がると、僕は靴を履くようになった。それ以降24歳まで、僕は靴を履き続けてきた。僕は幼少期の自然体に戻りたかったのだ。靴を脱いで…

静かな生命

僕はキノコに飢えていた。 というのも、春~秋の半年間、僕はカナダとアラスカの荒野を1人で旅しており、キノコを殆ど食べていなかったからだ。日本に帰国後間もなく、キノコに飢えていたそんな僕に友人から声がかかった。 「会津にキノコ狩りに行かない?…