旅する蜂ブログ

奥会津の地球暮らし

~マタギの見習い~ 自然を愛し、地球の詩を書き、奥会津の山奥で素朴に暮らす

僕と梅干し

「昔はあったけどもういらないから切っちまった」
誰に聞いてもそんな話が多く、近くで中々見つからない梅の木。
それでもようやく1本、貴重な1本の木を見つけた。
近くの山に住む、梅干し仙人の木だった。
数日前、梅干し仙人の家に野菜を届けに行った時、仙人は丁度梅干しを作っている最中だった。
古い家屋の中、梅干し仙人は奥さんと2人で楽しそうに漬けていた。
それを見て僕はもう一度漬けたくなった。
「あの梅の木、まだまだ取り残しがあるから、後は好きなだけ採っていいよ」
それを聞いて心が踊った。
数日後早速、僕は木に登っていった。
手を伸ばして一個一個もぎ、枝を手繰り寄せてもぎ、棒で突っつき落とし、拾った。
形も色も模様も固さも全てが異なる梅の実だった。
それは一つ一つが個を生きている証だった。
一部が膿んでる実、真っ青な実、虫につつかれてる実・・・それぞれがそれぞれの生に流れ、様々な物語を積んでいっている。
そしてその異なるもの達が一緒くたに壺に収まり、自然が運んできた多様な物語の詰まった梅干しとなってゆく。
採った僕と自然だけが知っている面白い物語も秘めて。
365個は無く、1年を賄う程の量は作れそうにないけれど、美味く漬かりますよーに!
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