2018-01-01から1年間の記事一覧
夏の間、雨が全く降らず、畑も森も山も乾き果てていたここ奥会津では連日、雨が続いています。 空が今までの分の埋め合わせをするかの様に。 しとしと、しとしと・・・瑞々しい音を奏でながら、雨は乾いた大地を一滴一滴潤しています。 畑に行こうと戸を開け…
お弁当。容器は、漆塗りの曲げわっぱ。幼稚園時代に買ってもらった大切な曲げわっぱだ。火力を間違えて焦がしてしまった玄米に、誕生日プレゼントに梅干し仙人さんから貰った梅干し。草が伸び放題のジャングルと化した庭で、強靭に育ち、採れた無農薬無肥料…
1年半前、20数年間身につけ続けていたパンツを捨てた。パンツに代わり、自作の褌を僕は身につけるようになった。褌を腰に、僕は日本を飛び立ち、北米の荒野を旅した。毎日毎日、偉大なる大河ユーコン川、雄大なる氷河の溶け水で褌を洗い、木の枝に吊るして…
会津の象徴、磐梯山。その麓に佇む猪苗代湖。夕陽が空を、湖を、砕ける1つ1つの波を、波に撫でられる砂浜を燃やした。森のなかで遊んでいた人々が、一人また一人と湖畔に自然と集まってきた。これこそが人々誰しもが求めるもの。夕陽が沈む。辺りが暗くな…
小さな小さな蜜蜂を捕まえに、毎日蜜蜂の巣箱に寄ってくる黄色雀蜂達。 雀蜂が近づく度に、蜜蜂達は固まり、その小さな体を震わせて抵抗する。 小さくて激しい生命の激突だ。 全身全霊全力で生きる眩しき命。 そんな雀蜂達を虫とり網で捕まえる。 箸ではさみ…
何もかもが初心者な僕。薪割りも当然下手くそだ。薪割りを始めて間もなく、斧の柄を思い切り丸太に叩きつけてしまい、見後に柄を折ってしまった。爺から受け継いだ大切な斧だ。このままでは冬の命を繋ぐ暖、薪を作ることが出来ない。早速、柄の取り替えにか…
落ちかけた陽は空を染め上げ、それは一晩中消えることがなかった。 黒々としたスプルースの森を隔てて、空と川が向き合っていた。涼しい風が静けさと共に流れてくる。フクロウが鳴く森の中から、狼の遠吠えが響いてきた。その震える声には一言では決して言い…
全国信用金庫協会さんで毎月発行される小冊子「楽しいわが家」の8月号に僕の文章を掲載させて頂きました。 一人でも多くの人々に自然からのメッセージを伝え、人々の心が自然に少しでも近づき、他のすべての生き物と調和のとれた世界に!この世界の自然が元…
早朝の沼沢湖。打ち上がっている流木を拾いながら湖岸に歩いてゆく。暫く歩いていると、気持ちが落ち着く場所を見つけた。そこは森の木の葉に頭上を覆われ、湖面に森が写る静かな場所だった。広いこの地で、自分が特に心地よいと感じる場所を見つけた時は嬉…
数ヶ月後に確実にやってくる冬。 そこを生きるために、薪割りを今日から始めた。 バリバリ割れる感触がたまらず、くさびをハンマーで、丸太に夢中になって打ち込んでゆく。 気づくと汗で全身びしょ濡れになり、体は焼石の様に熱かった。 脳裏に涼しい沼沢湖…
「昔はあったけどもういらないから切っちまった」 誰に聞いてもそんな話が多く、近くで中々見つからない梅の木。 それでもようやく1本、貴重な1本の木を見つけた。 近くの山に住む、梅干し仙人の木だった。 数日前、梅干し仙人の家に野菜を届けに行った時、…
強烈な日差しに焼かれる暑い午後。 あまりにも暑く、体は熱を帯び、汗がびしゃびしゃと止まらなかった。 たまらず、近くの山の中に住む友達に電話をかけ、家を出た。 向かう先は山の中に横たわる、静かな湖・沼沢湖。 森の木々に隠れた人の誰もいない、誰か…
ね山々の間を縫い、森を駆け巡り、朝の息を抱えて静かに吹いてくる朝の風。 虫や鳥の鳴き声、草木の香り、朝の涼しさを乗せた風に撫でられるヨモギとドクダミ達。 早朝に摘んできた野の精達だ。 風に当たり、音を浴び、彼らと一緒になって涼をとりながら静か…
半年程前、気づいたら福島県の山奥の地、金山町に僕は引っ越していた。 それは暗くて寒い、初めての会津の冬だった。 数ヵ月間の荒野の旅で使いきり、空になっていたエネルギーを溜めながら、冬を静かに生きてきた。 そして春が来た! 春を迎えた! 今まで静…
3羽の鶏が家族入りしてからそろそろ1ヶ月位たつのかな? 玄関を出ると彼らはいつでも何処からかパタパタパターと元気よく駆けてきて、僕の足元に集まってくる。 畑を弄っているときも近くで草を、虫をついばみながら戯れ、何処にいくのにも必ず僕の後をつ…
日に数回、僕らが必ず行く場所がある。 桑の木の下だ。 見上げると、いつでもそこには熟し、黒々と輝く桑の実が実っている。 木の下は言うまでもなく涼しい。 生い茂る枝に葉が生きた傘となり、昼の強烈な陽射しを防いでくれる。 涼しいだけでなくそこは心身…
再び湖に飛び込んだ。潜水して湖底を泳ぐと、夕日が線となって水に突き刺さっていた。それは陸上では決して見ることの出来ない神秘的な世界だった。暫く湖を満喫し、水から上がってハンモックに身を委ね、木漏れ日の下で宙に寝そべった。風が世界に動き、音…
夏が来た! 服を投げ捨て、カルデラの湖に飛び込んだ。 大昔に山が噴火して大穴が空き、長い時間をかけて雨水がたまって出来た神秘的な湖、沼沢湖。 泳ぐ魚を抱き、太陽、月、星々の姿を毎日見続け、降り落ちる雪を受け止め、流れ込む雪解け水を包み込み、風…
涼しい早朝、桑の木に鳥が集って鳴いていた。 もうそろそろ食べ頃なのだろうか? 僕らが木の下に行くと、鳥達は一斉に近くの木々に散らばった。 喜ばしい食事を邪魔して申し訳ない。 見上げると、なっていた。 いくつかの熟した桑の実が朝日を浴びて、輝いて…
「バス停いらないか?」 集落の小さなラーメン屋のなかでおじさんに言われたこの一言が始まりだった。 僕は、集落のバスの停留所をそっくりそのまま貰った。 もう使われず、新しい道路を作るので壊してしまうそうだ。 まだまだ使える停留所、壊すのは勿体無…
地球誕生以来、今までにない新しい朝が毎朝毎朝流れるようにやってくる! テレビや新聞等が流す世の歪みに朝から心かきみだされ、翻弄されることなく、真っ直ぐに地球を見れることは贅沢なことなのだろう。 鳥の鳴き声、川のせせらぎ、空気に空に森に山、自…
僕の住む山の谷の小さな集落に、大嵐がやって来た。 嵐の源は友達だ。 友達の大群が突然遊びにやって来た。先ず襲われたのは師匠のラーメン屋だった。 店内ぴっちぴちに入り、がいがい騒ぎだす。 ラーメンはずるずると腹の中に吸い込まれていった。腹を満た…
熊にかじられてしまった巣箱。 甘い蜂蜜の匂いに狂喜乱舞し、舐めること一心にかじり、引っ掻いたのだろう。 この熊の傷痕が、僕の記憶をほじくった。 そして昔読んだ本を思い出した。 ロシア・シベリアの荒野の探検物語、デルスゥウザーラだ。 熊が木上にあ…
先を先行していた仲間が叫んだ。 「あ、海亀だ!!」 その言葉に引き付けられ、僕を含めた後ろをゆく仲間達が集まった。 目に写ったのは、岩に打ち付けられた海亀の死骸だった。 僕らが行くと、群がっていたヤドカリの群がワッと四方八方に散っていった。 そ…
25歳の僕が最年少であった。 そこから30代、40代、50代、60代、そして75歳の長老と実に幅広い年齢層を成す怪しい集団が、巨大なザックを背負い、沖縄の離島・西表島の地に降り立った。 暑い夏の日差しが降り注ぐ4月の終わりのことだった。そこは静かな浜辺…
まだ雪の残る金山町から何百キロ南の、海を越えてはるか南の島のジャングルに行くために僕は飛行機に乗った。 暫くの間、僕は南国の水に空気に大地に海に抱かれてくる。 向かう先は西表島だ。家作りに蜜蜂に樹液採集、薪集めに畑に山菜祭りに芽吹く新緑の森…
「この小屋をおめーにやっからよ、自分で解体して好きなところに持っていって建てるってのはどうだ?」 2階建ての小屋を目の前に、隣村の政一さんが僕に言った。 その瞬間、めちゃめちゃ面白そうじゃん!!!僕の内部で好奇心が大爆発を起こした。でも、僕は…
ザックにタンクを入れ、僕は夜が明けたばかりの外に出た。太陽はまだ山の影に眠っているが、辺りはもうすっかり明るい。木の枝先、森の中、家の屋根の上、そこら場から小鳥の鳴き声が聞こえてくる。世界は目覚めていた。それは春と朝を喜ぶ、歓喜の歌声だっ…
近くの畑に、朽ち果てた1本の桐の老木が佇んでいた。 曲がりくねり、半分以上皮が剥がれ落ちている幹にはキツツキや虫食いの穴が幾つも空いていた。 蜜蜂の精にとり憑かれたように無我夢中で巣作りに没頭する僕に、隣のお爺さんがその老木を譲ってくれた。 …
「山を手入れしてくれないか・・・」 隣のおじさんからの仕事だった。 場所は僕らの集落の直ぐ裏にたつ小高い山。 以前その山で杉の間伐をやったそうだ。 しかし、運び出すのが大変で木は切りっぱなしで放置されている。 それらの木を山から出して掃除してほ…